『ゴジラ-1.0』で蘇った「奇跡の駆逐艦」大戦中は運が良かった? 戦後は多くの人を祖国へ

快進撃を続ける映画『ゴジラ-1.0』で獅子奮迅の働きを見せる駆逐艦「雪風」。幸運艦として知られる同艦はいつ生まれ、いつ退役したのでしょうか。実は最期は日本ではなかった、数奇な運命を辿った同艦について振り返ります。

スクリーンに再現されたのも幸運だからこそ

 そして日本海軍水上部隊の最後を飾った坊ノ岬沖海戦。米機動部隊艦載機の攻撃を受ける中、駆逐艦「雪風」の寺内正道艦長は艦橋の天蓋から顔を出して対空戦闘を指揮しました。ちなみに寺内艦長は操艦の指示を、すぐ下にいる中垣義幸航海長の肩を蹴ることで行っていたとか。

 戦艦「大和」も軽巡洋艦「矢矧」も沈み、第17駆逐隊として戦ってきた「浜風」も喪失。「磯風」は航行不能に陥ったため、「雪風」によって処分されました。

 こうして戦いを潜り抜けた「雪風」は舞鶴で1945年8月15日、終戦の日を迎えます。戦後は特別輸送艦となり、武装を撤去した上で仮設の居住区を置いて復員輸送に従事し、南方や中国から約1万3000人もの邦人を日本まで運びました。「雪風」で復員した中には、「ゲゲゲの鬼太郎」の作者として有名な、水木しげる氏もいます。この間には「雪風」楽団によって「復員者を迎える歌」という曲が作られ、艦内で演奏されていたようです。

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戦後、幸運艦の名を受け継いだ海上自衛隊の護衛艦「ゆきかぜ」(画像:海上自衛隊)。

 復員船としての役割を終えた「雪風」は、賠償艦として中華民国(現在の台湾)へ引き渡されることが決まり、1947年7月1日、佐世保を離れました。中華民国海軍では艦名を「丹陽」と改め、1966年に除籍されるまで同国海軍に所属していました。

 退役が決まった後は、関係者らによる返還運動もありましたが、結局、台湾で解体され、日本には舵輪と錨が返されるにとどまりました。1971年に海上自衛隊横須賀基地で行われた贈呈式には海上護衛司令長官などを務めた野村直邦元大将や艦長の寺内元中佐、東日出夫元中佐らが出席しています。また、式典では内田一臣海上幕僚長が「雪風」について「最も良くかつ精強に戦い、最も幸運に恵まれた艦」と評しています。2023年現在、この2つは広島県江田島の海上自衛隊第1術科学校に保存・展示されています。

 このように、いまや「雪風」の姿は写真もしくはイラストなどでしか見ることができません。しかし幸運艦であるがゆえに、その名は戦後初の国産護衛艦はるかぜ型の2番艦「ゆきかぜ」に受け継がれ、さらに冒頭に記したように、『ゴジラ-1.0』においてCGで蘇ったのです。

 作家の豊田 穣氏は著書「雪風ハ沈マズ」で、最後を「日本海軍を代表した『雪風』の活躍ぶりは、日本人の胸に長く刻みおかれるべきだろう」という一文で結んでいます。日本が生んだ偉大なキャラクター「ゴジラ」と共演できたことこそ、「雪風」の幸運の象徴といえるでしょう。今回の『ゴジラ-1.0』で主人公たちの乗る船として活躍した艦、ひょっとしたらこれを機に、より一層映画に出演するようになるかもしれません。

【了】

【引き渡し前の大掃除?】ピカピカに磨き上げられた駆逐艦「雪風」の艦内(写真)

『ゴジラ』登場兵器総まとめ! 旧軍戦闘機から自衛隊の戦車まで

Writer:

1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。

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