JALの奥義「エコノミー横1席減らし」廃止なぜ? 新国際線主力機「A350-1000」客室の“産みの親”にいろいろ聞いた
「世界一のエコノミー」のコンセプトをなぜ変更?
「ビジネスクラスは座席数が多い分、客室に求められる安全要件が厳しく、あの壁の高さでどうそれをクリアするのかという点はチャレンジングなポイントでした。そうしたことから、他社さんの多くはJALよりも10cm程度壁を低く設定しているところが多いですね」。なお、JALの新ビジネスクラスでは、約132cmの個室壁の高さを実現しています。
「2010年代中盤くらいまで、現行のビジネスクラスは非常に高い評価をいただいていたんですが、個室型座席が他社より出現すると古い座席モデルとみなされるようになってしまいました。また、座席の横幅も改善が必要だと考えましたので、A350-1000では、それらの改善を図ったものとなっています」
その一方で、以前のJAL国際線機材で好評だった部分を、あえて改めて誕生したのが「エコノミークラス」です。
JALの現行の主力エコノミーである「スカイワイダー」では、座席の横列を1席分減らすことで、1席あたりの広さを確保するというコンセプトを採用。世界的な評価機関からも表彰を受け、「世界最強のエコノミークラス」としても知られてきました。
しかし、A350-1000では3-3-3列の横9列。これはJALのA350-900国内線仕様機や他社と同様のシート配置となっています。
西垣氏はこの理由を「A350-1000の場合、横8列配置のオプション設定がなかったためです(編注:これまでのスカイワイダー搭載機はすべてボーイング製の機体)」と話します。
そうしたなか、JALの新エコノミークラスのシートピッチは84~86cm(33~34インチ)、幅は約46cm(18インチ)を標準に。「スカイワイダー」は、シートピッチ84~86cm、幅約45~48cmとのことから、居住スペースとしては、ほぼ同等の水準が確保されているのです。
「実はエアバスの客室には『エコノミークラスでも18インチ程度の横幅を確保する』というポリシーがあるんですよね。そこには私達も賛同し開発を進めました。とはいえ、A350-900国内線仕様機は17.4インチくらいの横幅で、そのままだとそれが上限になりそうでした。そこで、座席にひと工夫加えることにしました」
そこで西垣氏が注目したのは、座席のひじかけ。ここを従来より細いものとすることで、横9列ながら、従来とほぼ変わらない座面の広さを確保しています。
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JALのA350-1000は2023年12月にエアバスの最終組立工場があるフランス・トゥールーズから日本にやってきました。今後就航前改修を経て、2024年1月に羽田~ニューヨーク線でデビューを予定しています。
【了】
Writer: 松 稔生(航空ライター)
国内航空会社を中心に取材を続け、国内・海外を奔走する日々を送る。ゆとり世代。
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