かつてのライバル戦闘機ニコイチで誕生! メッサーの血を引くスペイン機が今も“戦い続ける” ワケ

オリジナルの代役として「実戦」デビュー

 大戦終結からしばらく経つと、Bf109は母国ドイツが敗戦国だったこともあって、飛行可能な機体が著しく少なくなりました。そこで、「代役」として白羽の矢が立ったのが、前述した経緯から見た目がよく似ていたHA-1112-M1Lでした。

 まず1つめは、1957年公開の『撃墜王 アフリカの星』。この映画は、ドイツが誇る撃墜王で「アフリカの星」ことハンス・ヨアヒム・ヴァルター・ルドルフ・ジークフリート・マルセイユの生涯を描いたものですが、劇中でドイツの名優ヨアヒム・ハンセン演じる主人公マルセイユの乗機として「出演」しています。

 その後、1969年に公開されたバトル・オブ・ブリテンを描いた超大作『空軍大戦略』では、イギリス空軍の「スピットファイア」や「ハリケーン」といった往年の名機を相手にスクリーン上で激戦を展開しました。

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スペインが開発・量産したHA-1112-M1L戦闘機(画像:サンディエゴ航空宇宙博物館)。

 また1990年に公開された『メンフィス・ベル』は、ドイツを爆撃するボーイングB-17「フライングフォートレス」爆撃機を描いた物語ですが、ここでも劇中、ドイツ軍機の役でB-17を追い回す敵機としてスクリーンの中を飛び回っています。

 最近でも、2017年公開の『ダンケルク』において、英仏海峡上空で「スピットファイア」と「戦って」いました。

 2023年現在もHA-1112-M1L「ブチョン」には、まだ飛行可能な機体が何機も残っています。しかも、中にはエンジンをオリジナルのBf109が積んでいたダイムラーベンツDB601やDB605に換装し、「顎下の素嚢」を切除することで「先祖返り」した機体もあります。

 傑作機Bf109は、第2次世界大戦を描いた映画やドラマでは常連といえるほど、よく出てきます。なので、今後もその代役として本機の「銀幕の戦場」での活躍が続くのは確実です。

【了】

【メッサーシュミットに見える?】色んな塗装のHA-1112を角度さまざまで眺めてみる(写真)

Writer: 白石 光(戦史研究家)

東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。

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1件のコメント

  1. 映画「アフリカの星」に使用されたのは、「イスパノHA-1109」が使用されています。