高さ&速さで世界記録だが… F-104「スターファイター」の毀誉褒貶 墜落しまくった国/理想的だった日本

世界的に珍しい海軍仕様のF-104戦闘機

 西ドイツ海軍ではF-104Gを対艦攻撃メインで使用していましたが、一方で同国空軍は核爆弾を搭載した戦闘爆撃機として用いていました。当時の西ドイツ空軍では1メガトンのB43核爆弾1個を胴体下に搭載したF-104Gが6機、24時間いつでも発進できる態勢を維持していました。

 ただ、ドイツ軍における運用は、敵の対空砲火をかわすために超低空を超高速で飛び抜けるというやり方がメインで、それゆえに事故が多発しています。前述したように西ドイツはF-104を916機導入していますが、そのうち実に270機を事故で失っており、パイロットについても110名が亡くなっています。

 季節によっては視程の悪いヨーロッパの空を高速で飛行する任務に、F-104Gは不向きの機体でしたが、冷戦に伴う東西陣営間の緊張が無謀ともいえるミッションを西ドイツ人パイロットらに強いていたといえるでしょう。

 ただ、これはF-104を設計したジョンソンが想定していた作戦ではありませんでした。むしろ、ジョンソンが想定していた運用イメージに近い使い方をしていたといえるのが、日本の航空自衛隊でした。

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1986年8月16日、旧モフェットフィールド海軍航空基地で撮影したドイツ海軍のF-104G戦闘機(細谷泰正撮影)。

 ジョンソンが朝鮮戦争の最前線で戦闘機パイロットから聞いた「より速く、より高い高度を飛行できる性能」というのは、航空自衛隊が追求していたスクランブル発進による、領空侵犯機への要撃という運用法がピッタリだったのです。その裏付けとして、航空自衛隊における同機の損耗率は西ドイツ軍のおよそ半分で済んでいます。

 ちなみに、筆者(細谷泰正:航空評論家/元AOPA JAPAN理事)は1986年夏、退役を前にアメリカツアーを行っていた当時の西ドイツ海軍のF-104Gをカリフォルニアの航空ショーで見ています。

 そのときは、すでに本国では後継機「トーネード」の配備が進んでおり、いかにも「老兵」といった感じでしたが、見た目とは裏腹にダイナミックな飛行を披露していました。

 そのとき撮った、世界的にも珍しい海軍機として使われたF-104Gの写真を見返すと、東西冷戦が終わり、東西ドイツが統一を果たし、旧ソ連が崩壊したという時代の流れを感じずにはいられません。

【了】

【なんでそんな機首に!?】「ピノキオ」と呼ばれた双発機 F-104との関係性は?(写真)

Writer: 細谷泰正(航空評論家/元AOPA JAPAN理事)

航空評論家、各国の航空行政、航空機研究が専門。日本オーナーパイロット協会(AOPA-JAPAN)元理事

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