自称「究極のルクレール」仏の最先端戦車が初披露 「あれ、乗員増えてるけど…」コンセプトはもはや別次元!?

次はもうない? 改良の終点に達したか「究極ルクレール」

 メーカーがこのコンセプトモデルを「究極」と呼んだのは、性能が向上したからだけではありません。「ウルティメット・ルクレール」は火力と防御力が向上しただけでなく、徘徊兵器の運用能力と第4の乗員による高度な情報分析能力を備えており、コンセプトモデルではあるものの、現代戦車としては最先端の存在といえるからです。

 とはいえ、そのベース車となった「ルクレール」が最初にフランス陸軍へ引き渡されたのは、今から30年以上前の1992年のことであり、アップグレードにも限界があります。この「ウルティメット・ルクレール」でも、4人めの乗員となるミッションオペレーターを追加するために車内スペースのトレードオフが行われており、その席を確保するために、18発の予備弾薬収納スペースが廃止され、車内に搭載できる主砲弾薬数は22発まで減少(従来のルクレールは計40発)しています。

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「ASCALON」の主砲は120mmと140mmがあり、それぞれの砲身を交換することも可能である(布留川 司撮影)。

 スペース問題だけでなく、「ルクレール」という戦車のフォーマットに則った改良はある意味で限界に達しており、これ以上の能力向上を臨むのであれば、まったく新しい車両を開発するか、そもそも戦車という枠組み自体も見直す必要があったと言えるでしょう。

 メーカー担当者も「この戦車の次世代を作る場合は、まったく新しい戦車になります」と説明していました。「究極」という言葉は前述したように物事の最後の極限点という意味を持っていますが、それは同時に成長と今後の終着地ということも指し示しています。

 なお、フランスとドイツは、互いの主力戦車である「ルクレール」と「レオパルト2」の後継車両を共同で開発するMGCS(陸上主力戦闘システム)計画を進めていますが、担当者いわくそのスケジュールは2030年代から2040年代へと大幅に遅れており、計画の今後の進展も不透明なものになっております。

 MGCS計画のスケジュール後ろ倒しとプロジェクトの成り行きの不透明さを鑑みると、まったく新しい次世代の戦車の登場はしばらく先のことだと思われます。また、その頃には陸上戦闘の様相や使われるテクノロジーも大きく変化していき、今後開発される戦車は我々が知っている今の形とは大きく異なったモノになる可能性すらあります。

 そのような背景を考えると、この「ルクレール・エボリューション」は我々がイメージする現代の戦車という枠組みでは、最後にして最高の「究極の戦車」となるのかもしれません。

【了】

【後ろ姿もイカツイな】「究極ルクレール」を前後左右いろんな角度から見る(写真)

Writer: 布留川 司(ルポライター・カメラマン)

雑誌編集者を経て現在はフリーのライター・カメラマンとして活躍。最近のおもな活動は国内外の軍事関係で、海外軍事系イベントや国内の自衛隊を精力的に取材。雑誌への記事寄稿やDVDでドキュメンタリー映像作品を発表している。 公式:https://twitter.com/wolfwork_info

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