原付で「ホンダの生い立ち」再現?「カブ主」大集合で“知られざる故事”に出会いました

知る人ぞ知るベロセット「LE」とホンダの繋がり

 さて、「スーパーカブ」と言えば高い信頼性と耐久性、そしてシンプルな構造が特徴のミニバイクです。裏を返せばアマチュアでもカスタムしやすいオートバイと言えるでしょう。

 だからこそ、個性的なカスタムカブが数多く集まるのですが、来場者の多くの目を集めていたのが1940年代のイギリス製バイク、ベロセット「LE」を模した「スーパーカブ」でした。かつて「LE」はイギリス警察にも多数が採用されたこともあって、オーナーは「スコットランドヤード」の通称で知られるロンドン警視庁の警察官のコスプレをしていました。

 オーナーの説明によると、ベロセット「LE」を模したのには、いまから80年ほど前の故事が大きく関係しているといいます。

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ホンダウェルカムプラザ青山に展示されたイベント開催記念の「スーパーカブ110」。バックのパネルは第1回~第26回までの「カフェカブミーティング in 青山」の写真をコラージュしたもの(山崎 龍撮影)。

 時計の針は戦後間もない時期にさかのぼります。当時、ベロセットの輸入代理店を営んでいた「野村モータース」社長の野村順亮(のむら・のぶあき)さんは、水平対抗2気筒エンジンを搭載した画期的コミューターの「LE」を輸入しました。そうしたら、ホンダから「購入したい」との申し出があったそうです。

 ホンダが「LE」を手に入れようとしていた理由が「いいバイクを作る参考車にする」にあることを知った野村さんは、予約金を返金し、無償で寄贈しました。これに感激した本田宗一郎さんは、野村さんをホンダ埼玉工場(当時)に招いて自ら案内し、盛大なお礼の宴を開いたといいます。さらに、後日販売を開始した「ドリームE」型の最初期型を記者会見でお披露目したあと、そのまま「野村モータース」に寄贈したとのこと。

 このことを鑑みると、「スーパーカブ」を含むホンダのバイクにベロセット「LE」が何かしらの影響を与えたことは事実でしょう。こうした故事からオーナーは「LE」を模した「スーパーカブ」を製作したのだとか。カスタムバイクとしての完成度もさることながら、こうした歴史的なエピソードをテーマしたところに、先人への畏敬の念とロマンを感じました。

【これがベロセット「LE」です】南青山で出会った個性的な「カブ主」の愛車たち(写真)

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