戦車の威厳を損ねる? ドローン対策の“ゴテゴテ化” アメリカ軍は最新戦車に採用するのか ハイテクで何とかなる?

ロシア・ウクライナ戦争で、ドローンなどによるトップアタックの脅威にさらされる戦車や装甲車。これには現場急造品も含めた装甲スクリーンで防御しています。果たしてこれは、アメリカが開発を進めるM1戦車の後継に採用されるでしょうか。

兵器開発には実戦からのフィードバックが最重要

 しかし、展示会に登場するような「実戦を経験していない」戦車は、ウクライナ軍のようにタートルタンクやコープゲージなどとも言われる追加装甲スクリーンをドローン対策として装備しません。格好悪く戦車の“威厳”を損ね、映えも大事な展示会には出したくないのは理解できるのですが、実際の戦場では必須の装備になっています。

 ドローン対策はウクライナ戦線において焦眉の急であり、追加装甲スクリーンのようなあり合わせの材料をつぎはぎした粗雑な現場急造品はバラエティに富んでおり、これがまたSNS上で映えたりしています。

 ウクライナに本社を置く鉄鋼・鉱業コングロマリット(複合企業体)のメトインベスト・グループは、各戦車用の追加装甲スクリーンを規格化し、ウクライナ軍主力のT-72やT-64用だけでなくM1用も製品化しています。全体重量は最大430kgで、1台に増備する作業時間は12時間とされます。

 ただスクリーンを張り巡らすのではなく、実戦の経験をもとに、M1の機能を損なわないよう作り込まれています。複雑高価で電力を食うAPSよりも実戦ではコスパに優れるかもしれません。アメリカはウクライナ軍仕様のM1の運用状況を観察評価しています。

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M1用追加装甲スクリーンの細部。ブローオフパネルの作動を妨げないように作り込まれているようだ(画像:メトインベスト・グループ)。

 では追加装甲スクリーンがM1E3にも標準装備化されることはあるのでしょうか。

 アメリカ軍は追加装甲スクリーンについて防御効果が限定的でしかないとする一方で、状況に応じて現場での工夫も可能なことから、乗員への心理的効果は無視できないと評価しています。「世界最強戦車」に乗っていようと、いざ実戦では乗員が隙を見て現地改造であれ装甲を積み増そうとするのは、古今東西行われてきたことです。

 現在はFPVドローンが最も厄介な敵とされていますが、この猛威もいつまで続くか分かりませんし、次の脅威が何になるのかも想像しにくい状況です。兵器開発には実戦からのフィードバックが最も重要で、ウクライナ戦争は絶好の機会のはずです。ただ、戦車が戦場から完全に駆逐されることは当分なさそうです。

【了】

【写真】これがM1!? 「ウクライナ仕様」になったエイブラムス戦車

Writer:

1975(昭和50)年に創刊した、50年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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