空自の次期戦闘機プロジェクト “金持ちの北朝鮮”登場で瓦解の危機!? 共同開発のジレンマ乗り切れるか

日本、イギリス、イタリアの3か国が共同で進める次期戦闘機の開発計画「GCAP」。この開発にサウジアラビアも参画しようとしています。一見すると喜ばしいことのようですが、日本にとっては悩ましい問題を含んでいる模様です。

サウジアラビアという国の特殊性

 日本の懸念の根底には、サウジアラビアという国家の特異性があります。サウジアラビアは、日本にとってエネルギー政策の鍵を握る重要な国ですが、独裁国家であり普遍的な価値観を共有できるパートナーかというと、その点には疑問が残ります。人権問題や周辺地域への軍事介入など、国際社会から批判を浴びる側面も持ち合わせており、時に国際社会の規範から逸脱する行動が見られるため、一部では「金持ちの北朝鮮」と揶揄されることさえあります。

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2024年10月に東京お台場で開催の「2024国際航空宇宙展」で展示されていた日英伊共同開発の次世代戦闘機GCAPのスケールモデル(乗りものニュース編集部撮影)。

 記憶に新しいのは、イエメン内戦におけるサウジアラビアの軍事介入です。戦闘機の航空攻撃によって多くの民間人が犠牲となり、非人道的であると国際的な非難を浴びました。もしGCAPにサウジアラビアが参画し、将来的に同機が同様の紛争で使用されるような事態になれば、日本政府は国内外から厳しい批判に晒されることは避けられません。

 GCAPを巡るサウジアラビアの参画問題は、日本の安全保障政策におけるジレンマを象徴しているといえるでしょう。経済的利益と国際社会における責任、自国の安全保障と平和国家としての自尊心、これら複数の要素を天秤にかけなければならないのです。簡単な解決策はありませんが、この難題に真摯に向き合い、熟慮を重ねたうえで最善の道を選択することこそが、今の日本に求められています。

 英伊と協調してサウジアラビアを迎え入れるべきか、それとも拒絶すべきか。「砂漠の王国」からの誘いは、日本にとって重大な試練となるのは間違いないでしょう。

【進化しています】洗練され続ける「GCAP」そのデザイン変遷をイッキ見(写真)

Writer:

1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。

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