「こんな欲張り電車は他にない」 大手私鉄3社ミックス“魔改造譲渡車”ついに引退 残る名車の行方は

島根の一畑電車で、京王電鉄の初代5000系を譲り受けた5010編成が引退。この電車、ただの京王5000系ではなく、関係者が「こんな欲張りな電車は一畑だけ」と豪語する、とびきり異色の“魔改造譲渡車”です。

地方で実現した“幻の京王5000系”

 名車の呼び声が高い旧京王帝都電鉄(現・京王電鉄)初代5000系を大幅に改造し、一畑電車(島根県)で活躍してきた5010号編成が2025年1月13日で運行を終えました。この編成は、京王を含めた計3つの首都圏鉄道事業者でかつて活躍していた車両から流用した1粒で3度オイシイ「異色トリオ」です。鉄道ファンらが殺到したラストランを取材し、一畑電車幹部らに導入のいきさつを聞きました。

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最終日の2025年1月13日に走行中の一畑電車5010号編成(大塚圭一郎撮影)

 京王初代5000系は1963(昭和38)年8月に登場。それまでの緑一色の電車とは全く異なるアイボリー色に赤色の帯が入った斬新なデザインで、京王の歴史に残る名車です。

 1996年12月1日に京王では旅客運用のラストランを迎えましたが、地方私鉄に譲渡された車両は改造された活躍を続けました。その中でも異彩を放つ“魔改造”を受けて1998年に導入されたのが、1967年製の5010・5110号の2両を連結した編成です。

 京王初代5000系は全長18mで客室に3つの片開き扉を備え、座席はロングシートを採用していました。ところが、一畑電車(当時は一畑電気鉄道)の5010号編成は京王子会社の京王重機整備で改造された際に片開き扉を2か所に減らし、座席も転換クロスシートに交換しました。

 これは出雲大社への参拝客ら向けに、出雲大社前~松江温泉(現・松江しんじ湖温泉)を結ぶ急行「出雲大社号」として走らせるためでした。この改造により、奇しくも京王初代5000系の“幻”の仕様が実現しました。

 京王が初代5000系を導入した目的の1つは、1968年10月からの新宿~東八王子(後に移転して京王八王子)における特急運転の開始です。最高速度90km/hで走って40分で結びました。

このため、開発段階では特急専用車両にして扉を2か所だけにし、クロスシートを設ける案も浮上していました。しかし、通勤通学客でごった返す朝夕のラッシュ時の運用に支障が出るため断念していました。

 移籍時の改造で先頭部の貫通扉が撤去されて塗装も一新するなど外観は大きく変わり、京王初代5000系の“幻のインテリア”も実現したのです。

【写真】もと京王に「座席だけ小田急ロマンスカー」の車内

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