「こんな欲張り電車は他にない」 大手私鉄3社ミックス“魔改造譲渡車”ついに引退 残る名車の行方は

島根の一畑電車で、京王電鉄の初代5000系を譲り受けた5010編成が引退。この電車、ただの京王5000系ではなく、関係者が「こんな欲張りな電車は一畑だけ」と豪語する、とびきり異色の“魔改造譲渡車”です。

残る旧京王5000系の行方は?

 東京都の京王電鉄沿線にかつて住み、京王初代5000系と小田急ロマンスカーNSE、旧営団3000系のいずれも好きな車両だった筆者にとって、一畑電車5010号編成は郷愁をかき立てる実に魅惑的な電車です。両端に「さよなら5010」と「惜別」などと記したヘッドマークを掲げた電車は出雲大社前14時00分発の雲州平田行きがラストランとなり、筆者は旧ロマンスカーNSEの座席に腰かけて余韻に浸りました。

Large 20250121 01

拡大画像

旧京王5000系の一畑電車2100系(大塚圭一郎撮影)

 多くが地方私鉄に移籍した京王初代5000系でも「こんなに欲張りな改造をしたのは一畑電車だけ」(黒川さん)と自負する、1粒で3度オイシイ5010号編成。引退は「惜しい」という哀愁を抱いた大勢のファンを乗せて14時59分に終点の雲州平田に滑り込みました。

 老朽化のため引退し、解体される5010号編成を含めた一畑電車の旧京王初代5000系(2両編成)は5編成あります。一方、2026年度にかけて導入される新型車両8000系は4両にとどまるため、取材中に会った地元関係者は、「予備車として旧京王5000系の一部が残る可能性もあり得るのではないか」との見方を示していました。

「老兵」の旧京王初代5000系が時代の流れとともに消えていくのは仕方がないのかもしれません。それでも遠方からも鉄道愛好家らを呼び込んでいる貴重な財産だけに、出雲路での少しでも長い快走を祈りたいと思います。

【写真】もと京王に「座席だけ小田急ロマンスカー」の車内

Writer:

1973年、東京都生まれ。97年に国立東京外国語大学フランス語学科卒、共同通信社に入社。ニューヨーク支局特派員、ワシントン支局次長を歴任し、アメリカに通算10年間住んだ。「乗りもの」ならば国内外のあらゆるものに関心を持つ。VIA鉄道カナダの愛好家団体「VIAクラブ日本支部」会員。

最新記事

コメント