「ヤンキーのガニ股乗りスクーター」の元祖に!? 女性向けのソフトバイクが、なぜかツッパリの熱い支持を得ちゃったワケ
1970年代中盤から確立されたジャンルであるファミリーバイク。なかでも革命的な存在として、のちのスクーターブームにもつながったのが、ヤマハから発売されたパッソルです。そんなパッソルにまつわるさまざまな「逸話」について、ご紹介します。
女性向けのはずがヤンキーにも支持を得た2つの理由
1つは、単にパッソルの爆発的なヒットによって当然ユーザーが広がり、それまで中~大型バイクに跨っていた不良少年たち、あるいはその末端層のヤンキーが「気軽に原チャリに乗り始めた」という説。そしてもう一つが、「盗みやすいバイクがパッソルだったから」という説です。
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とくに後者の説はまことしやかな話に聞こえるかもしれませんが、実は筆者にも実体験があります。高校時代(1980年代前半)、ヤンキーの先輩たちがこぞってパッソルに跨っている姿をよく見ました。そういう先輩に「なぜ、ヤンキーの皆さんがパッソルに乗るのか」の秘密を教えてもらったことがあります。その理由はパッソルの、ある意味での欠陥を逆手に取った点にありました。
パッソルのある部品を外すと、簡単にエンジンがかかるというトンデモ機能があり 、実際に先輩もそのかけ方を披露してくれました。驚きを隠せない筆者でしたが、こういった経緯から不良少年たちの間で「暗い夜のとばりの中を、盗んだパッソルで走り出す」ことになり、結果的に「ヤンキー×パッソル(盗難車)」が定着していったようにも思います。
ところで、後のスクーターブーム以降、多くのヤンキーが「ガニ股乗り」をするようになりました。姿勢をピンと立たせ、頭を少しハスに構え、ガニ股でスクーターに跨るわけですが、この「ガニ股乗り」の起源もまた、パッソルに乗ったヤンキーが確立させたものだという説があります。
いわばヤンキー御用達となったパッソルですが、元々は体の小さい主婦や女性向けのバイクであり、冒頭で触れたステップスルーなどは不良少年達の足元を覆いきれるものではありません。また、もともとがソフトな印象のパッソル。いくらヤンキー服を身にまとっていても、ステップスルーに足を揃えて乗っていては他のヤンキーにナメられる、といった見た目的な難点もあったかもしれません。
こんな事情からパッソルにヤンキーが乗ったことが「ガニ股乗り」の礎となったと見る人が少なくないのです。
必ずそうだとは言い切れませんが、1970年代以降のスクーターのファーストモデルがパッソルであること、そして前述のヤンキーの先輩たちも、すでにパッソルで「ガニ股乗り」をしていたことを照らし合わせば、やはりそのルーツはパッソルにあると筆者(松田義人:ライター・編集者)は考えています。
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