戦前は重要幹線も… 強力なライバル前に一時は廃線の危機 そこから逆襲を図った伊勢のローカル線
三重県の多気~鳥羽間で運行されるJR参宮線。現在はローカル線ですが、戦前は日本有数の重要路線で、東京や関西からの直通列車も運行されていました。近鉄特急に押されつつも、今なおハイグレードな快速も走ります。
長い行き違い線路 かつての長大編成が偲ばれる
そして1993(平成5)年、転換式クロスシートのキハ75形気動車が投入されました。一部120km/h運転も行うことで、快速「みえ」は名古屋~鳥羽間を最速1時間47分で結びます。運賃は2500円(指定席だと+330円)となって現在に至ります。近鉄特急が近鉄名古屋~鳥羽間で最速1時間33分(大半は1時間40分前後)、運賃+料金で3410円なので、JRが選択肢に入る程度には盛り返したともいえるでしょう。
では、現状はどうなのでしょうか。筆者(安藤昌季:乗りものライター)は木曜日の朝、多気駅7時1分発の鳥羽行きに乗車しました。車両は3扉ロングシート車のキハ25形1000番台。トイレ付きなのはJR東海らしい点で、長時間乗車にも対応しています。
7時5分、田園の中にある外城田駅に到着。乗降はわずかでした。
7時11分着の田丸駅では、名古屋行き快速「みえ2号」と列車交換。「みえ2号」は立客も見える混雑でした。7時16分着の宮川駅ではホームより長い行き違い用線路が見え、これはかつて長編成の列車が行き交っていたことの証でもあります。
7時20分、山田上口駅に到着。車内は次第に学生客が増えてきました。7時22分、伊勢市駅に到着。ここでは近鉄山田線と乗り換えができ、ホームの番線表示はJR東海と通算しています。2分間停車し、学生客が大量に下車しました。
7時29分、1面1線の無人駅である五十鈴ケ丘に到着。しかしながら乗降は多く見られました。
7時34分着の二見浦駅で、快速「みえ4号」と列車交換しますが、「みえ4号」にも多くの乗客がいました。次の松下駅を出ると、車窓に伊勢湾の美しい風景が広がります。海が途切れると、近鉄鳥羽線の線路が並走し、7時44分に終点の鳥羽駅着。広大な駅構内に2両の気動車が止まっている風景は、少し寂しさも感じるものでした。
豪華観光特急「しまかぜ」なども運行する近鉄に、JR東海がどう対抗するのか、今後の施策が注目されます。
Writer: 安藤昌季(乗りものライター)
ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロイラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。
>近鉄特急が近鉄名古屋~鳥羽間で最速1時間33分(大半は1時間40分前後)、
運賃+料金で3410円なので、JRが選択肢に入る程度には盛り返したともいえるでしょう。
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これは名古屋発のJR東海ダイヤのために紀勢線ダイヤ(及び、JR西との亀山接続)が
割を食っている点を「度外視した」場合の方便でしかない。つまり県内の単線・各停ローカルが
住民の足としては「そもそも機能していない」ことをも等閑視した記事であり、JR東海と西の
連携不調を追認するものと映る。
例えば、JRの京都(草津線)や大阪(関西線)方面からの終点は亀山駅になるが、
「戦前や60sの一時期は直通していたものが」JR分社化以降、柘植-亀山間で最大
2回の乗り継ぎが生じることで、関西方面からの連絡を完全に阻害している。
因みに京都-津の95km程度をJR西を使った場合は最悪3h30を要する。
一時間に一本の名古屋方面の利便性(とやら)を喧伝することは、評価として均衡を欠いている。
つまり、これを近鉄特急の競争力「だけで」説明することはJR西・東海の観光列車企画、運用に
おける長年の不作為、および機会損失を不問にすることに等しい。
もともと参宮線の前身は五畿七道を起源とする。斎王の「群行」や明治天皇の聖跡、
或いは将軍の伊勢参りと江戸のお伊勢参りの遥か古代にまでさかのぼる奈良や京都の朝廷文化と
密接に繋がるもの。歴史回廊、文化面での連絡、さらにはインバウンドを考えても、乗り鉄ありき、
こうした記事は厚みが足りない。イチゲン観光客や乗り物オタクの視点ばかりではなく、
機会があれば、交通行政としてのJRの役割や広域移動の視点からの記事を期待したい。