「速さ」から舵を切った? 国鉄・JRと勝負し続ける近鉄「名阪特急」 競争の80年

名古屋~大阪間を結ぶ近畿日本鉄道の名阪特急は、近鉄で最も歴史のある特急列車です。国鉄特急、東海道新幹線といった強敵を相手に、独自の魅力を追求してきました。

上質な車内環境を追求へ

 こうした努力にも関わらず、2010年代には名阪特急の利用客数が頭打ちとなっていきました。豪華な室内をウリとする50000系電車「しまかぜ」が好評だったこともあり、近鉄は輸送人員確保ではなく「お客様にご満足いただくためには、どの程度の座席空間が必要か」という逆算の発想で、東海道新幹線よりも快適な車両を開発します。こうして、満を持して登場したのが、2020年より投入された80000系電車「ひのとり」です。

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新型80000系電車「ひのとり」(安藤昌季撮影)

「乗車2時間を、ビジネスでも観光でもリラックスしてくつろげる客室空間」を実現するため、レギュラーシート、プレミアムシートともにバックシェルを装備して、リクライニングへの配慮を示しています。レギュラーシートですら座席間隔は1160mmと、新幹線グリーン車と同一。個別コンセント、Wi-Fiなど、時代に合ったサービスを提供する豪華車両です。

 筆者(安藤昌季:乗りものライター)が思うに、「ひのとり」のレギュラーシートは座席形状がよくフットレストも備わり、日本の特急車両のなかでもトップクラスの設備だと捉えています。2・5・7号車には、現代では珍しいフリースペースも備わります。

 先頭車両に設けられた1+2列のプレミアムシートは、床が高く眺望性に優れたハイデッカー構造。座席間隔1300mmの本革シートは、新幹線グランクラスに近い居住性を備えています。最前列からは前面展望も楽しめ、車端部にはコイン式のコーヒーメーカーを備えた「カフェスポット」やロッカーまであります。

 速達性についても、鶴橋~近鉄名古屋間では津駅に停車しつつ1時間59分の最速ダイヤを維持しており、停車時間を含む平均速度である表定速度は91km/hと、私鉄特急では最速の高い利便性を誇っています。

 21000系「アーバンライナー」が置き換え時期に入る今後、80000系「ひのとり」が増備されるのか、名阪特急の動向が注目されます。

近鉄キラー? 立ちはだかった国鉄の特急とは(写真)

Writer:

ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロイラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。

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