なぜ熊本市電の追突事故起きた? 路面電車に安全システム付け難いワケ “ならでは”の理由も
自動車と比べ鉄道は、列車どうしの事故は圧倒的に少ない傾向にありますが、どのような方法で安全運行を保っているのでしょうか。熊本市電で発生した追突事故を例に考察してみます。
クルマの自動ブレーキのような仕組みを鉄道に応用できる?
地下鉄では、東京メトロ丸ノ内線で2024年12月から本格的に採用されました。ほかにも地方私鉄の伊豆箱根鉄道駿豆線などでも、CBTCに似たシステムで試験が行われています。

仮に路面電車でCBTCが採用されると、安全性が高められるのかもしれません。また、自動車ではセンサーによって事故を防ぐ仕組みを搭載した車両が増えていますが、これを路面電車に応用するのもひとつの手なのかもしれません。
ただし、ATSやATCなどの保安装置や、CBTCなどの無線式列車制御システムは、列車や車両のブレーキが確実に働くことが前提となっています。今回の熊本市電の追突事故では、線路上から油分が確認されたという報告もあり、これによって車両のブレーキ性能が低下した場合には別の話となってしまいます。
多数の車両を連結した長い編成の列車では近年、ある車軸でブレーキ性能が低下した際にほかの車軸のブレーキを強くすることで、全体としてブレーキの性能を保つという仕組みが採用されつつあります。ただ、路面電車の場合は1両で走ることが多いので、ブレーキ性能の低下を補う仕組みを備えにくいのが実情です。
Writer: 柴田東吾(鉄道趣味ライター)
1974年東京都生まれ。大学の電気工学科を卒業後、信号機器メーカー、鉄道会社勤務等を経て、現在フリー。JR線の2度目の「乗りつぶし」に挑戦するも、九州南部を残して頓挫、飛行機の趣味は某ハイジャック事件からコクピットへの入室ができなくなり、挫折。現在は車両研究が主力で、技術・形態・運用・保守・転配・履歴等の研究を行う。鉄道雑誌への寄稿多数。資格は大型二種免許を取るも、一度もバスで路上を走った経験なし。
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