とりあえず車体に大砲つけばOK!「2階建て戦車」M3が超有能だったワケ「ウチのより使える」と英軍も大満足!?

大戦中のアメリカ戦車に、砲を2段重ねで装備した異形の戦車が存在しました。M3と名付けられた戦車は、M4「シャーマン」が本格配備されるまでの中継ぎ的存在でしたが、イギリス軍では重宝されたとか。どこが良かったのでしょうか。

大砲と砲塔、二段式で備えた異形の戦車

 1939年9月、第2次世界大戦が勃発しました。アメリカがまだ中立を保っていた1940年12月末、時の大統領フランクリン・ルーズベルトは、自国を「デモクラシーの兵器工場」と称します。そして、当時としては世界水準を超えたM3中戦車を開発して戦力化。本車は、当時、フランスの休戦にともなって単独でドイツと戦い続けていたイギリスを大いに助けました。

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M3「グラント」中戦車。(柘植優介撮影)。

 イギリスには軍用機や大小さまざまな船舶などとともに、軍用車両も大量に引き渡されましたが、その中に見るからに異形の戦車もありました。M3と呼ばれていたこの車両、車体に大砲を備え、その上に全周旋回が可能な砲塔を搭載するという、いわば「2階建て」と呼べる構造でした。

 一般的な戦車は、平べったい車体に全周旋回式の砲塔を備え、そこに大砲を設置しています。対してM3中戦車は明らかに縦方向に伸びた車体で、右側面に限定旋回式で大砲を装備しています。そして車体上部の砲塔には小口径の戦車砲を備えています。

 なぜ、砲塔に大砲を備えず、このようないびつな造りを採用したのでしょうか。そこには、知られざるアメリカの事情がありました。

 M3中戦車の出自を探るためには、時計の針を第1次世界大戦後の戦間期に戻す必要があります。この頃のアメリカは、不況や軍事費削減の影響に加えて、将来的にどのような戦車が必要かというコンセプトの研究も混乱しており、戦車の開発は低調でした。とはいえ、工業大国ゆえにエンジンや装甲板、無線機器といった、戦車の開発や量産に不可欠な基礎工業力に恵まれているという、国としての強みもありました。そのような状況下、1939年9月にヨーロッパで第2次世界大戦が始まります。

 当初、アメリカは中立を保っていましたが、第1次世界大戦でともに戦ったフランスが早くも降伏し、残されたイギリスも苦戦中。他方で、太平洋方面においては日本との関係悪化も続いており、アメリカもいつ戦乱に巻き込まれるか風雲急を告げる状態でした。そこでアメリカ陸軍は、増加試作の域を出ていなかったM2中戦車の量産を実施しようとします。

【画像】これが「キングコング」と呼ばれたM3戦車の派生型です

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コメント

1件のコメント

  1. ロシア兵からは7人兄弟の棺桶とも言われてましたよね