とりあえず車体に大砲つけばOK!「2階建て戦車」M3が超有能だったワケ「ウチのより使える」と英軍も大満足!?

大戦中のアメリカ戦車に、砲を2段重ねで装備した異形の戦車が存在しました。M3と名付けられた戦車は、M4「シャーマン」が本格配備されるまでの中継ぎ的存在でしたが、イギリス軍では重宝されたとか。どこが良かったのでしょうか。

M4中戦車がデビューするまでの中継ぎとして

 ところがヨーロッパから伝えられた戦訓の結果、機関銃を9挺も装備するものの、主武装が低威力の37mm砲であるM2では、攻撃力の面で劣っていると判断されてしまいます。小口径の37mm砲では、砲弾が小さいせいで歩兵の支援に不可欠な榴弾の炸薬量が少なく威力不足で、装甲貫徹力も、戦車の重装甲化にともなって早晩、同様に威力不足となることが懸念されたのです。

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M3中戦車を正面から捉えた写真。明らかに車体に備えた大砲の砲座が、車体中心線から飛び出ているのがわかる(画像:アメリカ国立公文書館)。

 そこで白羽の矢が立ったのが75mm砲でした。榴弾も徹甲弾も撃てるこの75mm戦車砲であれば、歩兵支援でも戦車戦でも必要十分な威力を持っているとされ、搭載が検討されるようになります。

 こうして、すでに量産済みで信頼性も担保されているM2の足回りやエンジンを転用し、武装だけを75mm砲搭載に変えた中戦車の開発が始まります。ところが、M3と命名された本車の開発には、ひとつネックがありました。それは、75mmという当時としては大口径の戦車砲が搭載可能な大型の鋳造砲塔と、その砲塔を支えるターレット・リングを造る技術が、当時のアメリカには不足していたことでした。

 とはいえ、イチから設計変更をするとなると、ドイツや日本との戦いに間に合わない恐れがあります。そこで、大幅な設計変更を伴わずに75mm戦車砲を搭載することを検討。とりあえず、75mm砲搭載の大型砲塔は、M3に続くM4中戦車で実装することにして、M3では、暫定的に車体右側に砲座を設け、同砲を搭載することでクリアすることにしたのです。また75mm砲を搭載するため背高になった車体中央の戦闘室の上に、さらに37mm砲を収めた小型の全周旋回砲塔を載せることで、後ろ半分の攻撃に対応するようにしました。

 こうして誕生したからこそ、M3は車体に75mm戦車砲を、砲塔に37mm砲を搭載した「2階建て戦車」として完成したのです。なお、75mm戦車砲は、全周旋回砲塔に搭載されているわけではないので、左右にそれぞれ15度しか射界がなく、上下(俯仰)はプラス20度からマイナス9度でした。

【画像】これが「キングコング」と呼ばれたM3戦車の派生型です

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コメント

1件のコメント

  1. ロシア兵からは7人兄弟の棺桶とも言われてましたよね