戦車砲なぜ「ツルツル」がいい? 西側の戦車は全て“先祖返り”に「最後の砦」英国が採用した理由とは

戦車の砲身は、ライフリング(溝)が刻まれていない滑腔砲です。この形式は19世紀以前のトレンドでしたが、溝付きの普及により一度は廃れ、また主流になったのです。

イギリスもついに“ツルツル”砲身のテストを行う

 イギリスの兵器関連企業RBSL(ラインメタル・BAEシステムズ・ランド)がテストを進めているイギリス陸軍向け主力戦車「チャレンジャー3」。この戦車の大きな特徴は、主砲がイギリス伝統の120mmライフル砲から、ついにラインメタル製の120mm滑腔砲に換装された点です。

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テスト中の「チャレンジャー3」戦車の試作車。同車には滑腔砲が採用される予定だ(画像:イギリス陸軍)。

「チャレンジャー3」は2027年頃から運用されるとみられており、これによりイギリス陸軍は、戦車砲の種類に関して北大西洋条約機構(NATO)の加盟国など、ほかの西側陣営の国と足並みを揃えることになりました。「ライフル砲」とは、砲身内部に溝(ライフリング)が施された砲全般を指し、砲身内部に溝が入っていなツルツルなものは「滑腔砲」と呼びます。そもそも、砲や銃など火器の歴史を振り返ると、滑腔砲の方が先に登場し、その後はライフル砲が主流となったものの、戦車砲については溝なしに先祖返りしているのです。

 戦車は、第一次世界大戦中の1916年9月に世界で初めて実戦投入されました。当時、命中精度と射程に優れることから砲兵の装備する野戦砲は、ほぼ全て砲身内に溝が刻まれていました。

 以前は、砲弾が先込め式だったため、溝が刻まれていると弾を奥に押し込めにくく、装填に手間取る、砲身の耐久力に問題があるといった理由でライフル砲の使用は限定的でしたが、19世紀中頃以降に砲尾を開閉できる後装式大砲が登場すると、ライフル砲は瞬く間に広がりました。当然、戦車は登場当初から後装式の砲が付けられていたため、最初からライフル砲を使用していました。

 第二次世界大戦になると砲身は急速に大口径化していきますが、砲はライフル砲のままでした。しかし、戦後しばらくすると、大きな変化を迫られることになります。APFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)と呼ばれる種類の砲弾が登場したからです。

 この砲弾は、分厚くなる戦車の装甲をいかに簡単に貫通させるかに主眼が置かれた砲弾です。それまでの徹甲弾と違い、発射後に装弾筒から、タングステンなど硬い素材で作られた侵徹体とよばれる矢のような弾体が分離するタイプの砲弾となっています。

 APFSDSは細長いため、着弾時の速度が速く、着弾面積も通常使う装甲貫通用の徹甲弾よりも小さいのが特徴です。そのため、一点に力を集中することができ、装甲への貫通力が格段に向上しています。APFSDS自体はライフル砲でも使えますが、無駄な回転が加わることで威力が減衰してしまうという問題がありました。

【あ、ツルツルだ…】これが「チャレンジャー3」の砲身内部です(写真)

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