JR東日本「荷物新幹線」になぜ熱心? JR貨物はどう思ってる? 次世代新幹線も「物流」前提か
鉄道網を活用した物流サービスが拡大していますが、特に熱心なのがJR東日本です。2025年秋には新幹線で荷物輸送専用車両のデビューも予定されています。なぜ同社は今、荷物輸送サービスに注力するのでしょうか。
なぜJR東日本は荷物輸送に注力するのか
自動車が普及し、道路網が整備されるまで、鉄道は陸上交通における独占的な存在でした。鉄道でなければ荷物を全国各地へ迅速、正確に運ぶことはできなかったため、現在なら宅配便に依頼するような荷物も鉄道で送られていました。
荷物輸送は旅客列車に「荷物車」を連結、または客車の一部を「荷物車」として輸送しました。主要幹線では荷物専用列車が設定されるほどでしたが、1970年代に入ると、トラック輸送が宅配便などの多頻度少量輸送に進出。国鉄の扱い個数は1974(昭和49)年の約7億8000万個をピークに減少に転じ、1980(昭和55)年には半減しました。
荷物輸送は国鉄民営化を控えた1986(昭和61)年、新幹線を利用した「レールゴーサービス」などごく一部を除き、全廃されましたが、国鉄では貨物局が貨物輸送、旅客局が旅客輸送と荷物輸送が管轄していた経緯から、荷物輸送は旅客会社に引き継がれました。
JR東日本は法人向けの「はこビュン」に加え、個人向けに列車出発の30分前までに荷物1つから利用できる「はこビュンQuick」も展開しており、今後は日本郵政グループや日本通運グループと連携し、さらにサービスを拡大する予定です。
こうした歴史を踏まえてみると、新幹線を利用した物流サービスは約40年の時を経て復活した「荷物輸送」であり、JR貨物とは競合しない存在であることが分かるでしょう。
ではなぜJR東日本は荷物輸送サービスに注力しているのでしょうか。
2023年度の東北新幹線の旅客運輸収入は、対2018年度で9割弱の水準です。2024年度は対前年比3~4%増収する見込みですが、2019年に消費税率が改定されたことを踏まえれば、順調とは言えません。
また、東北地方は人口減少が進んでいる地域であり、旅客需要も縮小が見込まれます。そうした中、収益を最大化するためには、輸送量の減少分をこれまでと異なる形でお金に変えなければなりません。そのひとつの選択肢が荷物輸送というわけです。
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