JR東日本「荷物新幹線」になぜ熱心? JR貨物はどう思ってる? 次世代新幹線も「物流」前提か
鉄道網を活用した物流サービスが拡大していますが、特に熱心なのがJR東日本です。2025年秋には新幹線で荷物輸送専用車両のデビューも予定されています。なぜ同社は今、荷物輸送サービスに注力するのでしょうか。
東海道・山陽新幹線の「荷物輸送」の需要は?
野村総合研究所は2025年1月、新幹線荷物輸送による速達需要の潜在需要を独自に推計した結果、東海道・山陽新幹線では1列車あたり2両、その他の線区では最大1両程度の需要が見込まれるとレポートしています。
もちろんこれは「新幹線が輸送ポテンシャルを最大限に発揮した場合」の推計で、ハードルの高い目標ですが、2030年度のデビューを目指して開発が進む東北新幹線向け次期車両「E10系」では、荷物輸送用ドアを設置するなど、荷物輸送の拡大を見据えた車両構造としています。
一方、E10系は事実上の試作車両にあたる第1編成にグランクラスを設定しないことが話題となりました。量産車の仕様は今後、検討するとのことですが、「なすの」や「やまびこ」など短区間列車ではグランクラスの利用率が芳しくないことから、これら列車に充当する車両は上級座席より(積載スペースは限定的ですが)荷物輸送を優先したとも言えそうです。
前述の「大口定期運行サービス」では臨時列車の車両2両を荷物用に使用しますが、推計のように輸送量が増えれば、将来の車両は10両中1両が荷物車になる可能性もあるでしょう。
もうひとつは東京を中心に、東北、秋田、山形、北陸、上越の5方面に広がるJR東日本の新幹線ネットワークの特性です。現在は東北新幹線のみの展開ですが、他線区でも検討が進んでいます。各地の農産物、水産物など豊かな資源を東京に運び、さらにグループの商業施設で活用することでグループ全体の価値向上が期待できます。
鉄道貨物・荷物輸送はトラックドライバー不足の解決も期待されています。一度は忘れられた荷物輸送が生まれ変わるのか。10年後の姿に注目です。
Writer: 枝久保達也(鉄道ライター・都市交通史研究家)
1982年、埼玉県生まれ。東京地下鉄(東京メトロ)で広報、マーケティング・リサーチ業務などを担当し、2017年に退職。鉄道ジャーナリストとして執筆活動とメディア対応を行う傍ら、都市交通史研究家として首都圏を中心とした鉄道史を研究する。著書『戦時下の地下鉄 新橋駅幻のホームと帝都高速度交通営団』(2021年 青弓社)で第47回交通図書賞歴史部門受賞。Twitter:@semakixxx
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