アジア製戦車を欧州へ 口火きったのは韓国K2 「兵器+交通インフラ」ビジネスから学ぶこと
ポーランドが、韓国からK2戦車とともに路面電車も購入しました。一見すると関連なさそうですが、ここには戦車も鉄道車両も製造できる、総合メーカーとしてのヒュンダイロテムの戦略がありました。
日本は三菱重工業などが担えそう?
2024年には、黒海西岸に位置するコンスタンツァの港湾近代化計画に際し、ヒュンダイは無人搬送車(AGV)を提案。AGVは重量コンテナを自動的に移動させるシステムで、荷降ろしエリア~ドック間、および鉄道線路~荷降ろしエリア間の輸送を迅速にするものです。

ルーマニアの鉄道と道路インフラは社会主義政権時代からほとんど投資されず、EUとNATOの中でも最下位レベルとされています。ヒュンダイロテムの「戦車+インフラ」の提供が実際にどのように実施されるのか、また貧弱な道路をK2の移送に耐えられるように改修するのかなど課題はありますが、インフラ整備は戦車のためだけでなく、社会経済全般に貢献します。
韓国は国家ぐるみで、K2商談と抱き合わせで道路・鉄道網の近代化というパッケージ提案を行っており、トータルで経済関係を深めようとしています。2024年5月、ルーマニア国内ではK2の実弾射撃を含む実地試験が行われました。早ければ2025年内にも、K2が発注されるとの見方もあります。
防衛力強化とは単に兵器だけ揃えても意味はありません。道路や鉄道といったインフラも防衛力の構成要素です。戦車が何台、自走砲を何台受注したというニュースばかり注目されますが、裏で「オールインワン」のような広範な外交通商が行われているのが実像です。単品のカタログスペックだけで商談が成立しているわけではありません。
日本には三菱重工業をはじめとしたヒュンダイグループを凌ぐ総合重工業企業群が存在します。本気で防衛装備品の輸出に力を入れようとするなら、この競合相手から学ぶこと、日本ができることは多いはずだと筆者(月刊PANZER編集部)は捉えています。
Writer: 月刊PANZER編集部
1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。
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