なぜ!? 路面電車“悲願の復活”から10年で“廃止”へ!「バスにします」鉄道だとダメなのか? アメリカ

開通から10年に満たないアメリカの首都ワシントンDCの路面電車が廃止される見通しです。64年ぶりに復活した悲願の路面電車は、なぜ終点に向かおうとしているのでしょうか。

開業からの運賃収入は…

 一見すると利便性が高いものの、この路線には「決定的な弱点」が3つあります。

Large 20250620 01

拡大画像

DCストリートカーのユニオン駅停留場の案内標識(大塚圭一郎撮影)

 ひとつは、沿線のワシントンDCの北東地区は「低所得者が多く、公共交通機関の運賃を支払うのも負担になる」(DC住民)のを背景に、開業から9年が過ぎた今も「無料運行中」で有料化を見通せないことです。

 ワシントンDCはホワイトハウスや政府機関、高級住宅地のジョージタウンがある北西地区は活気があるのに対し、北東地区は古くて手狭な住宅が多く並び、犯罪発生率も高めです。DCストリートカーは地域活性化と利便性向上の起爆剤となり、建設による雇用創出も含めた“一石三鳥”が期待されました。沿線にはしゃれた飲食店なども開業し、2019会計年度の累計利用者数は118万5571人に達しました。

 ところが、新型コロナウイルス禍で利用者数が落ち込み、23会計年度も83万6438人と回復が鈍いまま。有料化した場合、利用者離れが加速するのは必至です。

 これに対し、さまざまな場所と結ぶことができるEVバスに切り替えれば、通常の路線バスと同じように課金が可能になります。

 2つ目は、路線延伸の挫折です。DCストリートカーはもともと「計40マイル(約64キロ)の路線網を整備する計画だった」(地元メディア)とされ、現行路線もユニオン駅から西へ延ばしてジョージタウンまで走らせる一方、オクラホマ通りから東へ延ばしてワシントンメトロのベニングロード駅につなげる予定でした。

 しかし、ジョージタウン住民からは「路面電車でアクセスしやすくなれば治安が悪化する」といった反対意見が相次ぎ、途中の中心部の交通渋滞に拍車がかかりかねないとの懸念も出て頓挫します。

 他方でベニングロード駅の周辺は「主に黒人と低所得者世帯が住んでいる地域」(地元紙ワシントン・ポスト)で一定の利用を見込めるものの、建設費に約1億ドルを要し、運行費も年間約1000万ドルが見込まれることがネックとなって中止に追い込まれました。

【え…!】これが10年で廃止される「新型路面電車」です(地図/写真)

最新記事

コメント

1件のコメント

  1. ”沿線のワシントンDCの北東地区は「低所得者が多く、公共交通機関の運賃を支払うのも負担になる」(DC住民)”

    であれば、

    ”さまざまな場所と結ぶことができるEVバスに切り替えれば、通常の路線バスと同じように課金が可能”

    となっても利用客は増えないのでは?運賃無料の理由がなくなればよいって感じなのかな。