なぜ!? 路面電車“悲願の復活”から10年で“廃止”へ!「バスにします」鉄道だとダメなのか? アメリカ
開通から10年に満たないアメリカの首都ワシントンDCの路面電車が廃止される見通しです。64年ぶりに復活した悲願の路面電車は、なぜ終点に向かおうとしているのでしょうか。
EVバスなら「設備が使える」
3つ目は路面電車の運行や整備にコストがかさみ、将来の車両置き換えにも多額の投資が必要となってワシントンDCの財政を圧迫するという懐事情です。EVバスならば経費削減につながる上、導入する車両には集電装置を設けることで、路面電車用に設置された架線から電気を取り込めるようにします。

すなわち、有料化や延伸を見通せなくなったDCストリートカーの「決定的な弱点」を克服するため、路面電車のインフラを一部活用して利便性を高め、コストも低減できるEVバスに置き換える戦略です。
ワシントンDCのケビン・ドナヒュー管理官は、この計画について「現在の路面電車路線をより機敏に、より迅速に拡充することが可能になる」と胸を張ります。
ただ、北東地区に路面電車を導入した背景には、沿線に観光客らを呼び込めるようにし、活性化を促す狙いがありました。路面電車を廃止した後の沿線は「都市再生の失敗例」のらく印を押されたり、通るのは数多くあるバス路線の一部に過ぎないため魅力が低下したりしかねません。
実際、「路面電車は移動手段を超える役割を果たしてきただけに、廃止してほしくない」と訴える沿線住民もいます。「そろばん勘定」では一見合理的でも、「住民感情」は必ずしも歓迎ではない路面電車の廃止は、八方ふさがりになった苦渋の決断を浮き彫りにしています。
Writer: 大塚圭一郎(共同通信社経済部次長・鉄旅オブザイヤー審査員)
1973年、東京都生まれ。97年に国立東京外国語大学フランス語学科卒、共同通信社に入社。ニューヨーク支局特派員、ワシントン支局次長を歴任し、アメリカに通算10年間住んだ。「乗りもの」ならば国内外のあらゆるものに関心を持つ。VIA鉄道カナダの愛好家団体「VIAクラブ日本支部」会員。
”沿線のワシントンDCの北東地区は「低所得者が多く、公共交通機関の運賃を支払うのも負担になる」(DC住民)”
であれば、
”さまざまな場所と結ぶことができるEVバスに切り替えれば、通常の路線バスと同じように課金が可能”
となっても利用客は増えないのでは?運賃無料の理由がなくなればよいって感じなのかな。