総武線はなぜ「へ」の字なのか? 却下された「幻の直線ルート」 線路曲げたらなぜか“OK”に!?

JR総武本線は、亀戸~船橋間で「へ」の字を書くように大きく北へ迂回しています。当初は、市川へ遠回りせずに直線で結ぶ構想でしたが、明治時代の世相が「渡りに舟」となり、現在の線形に落ち着きました。どのような経緯だったのでしょうか。

日本陸軍が「渡りに舟」の強い味方に

 総州鉄道と武総鉄道は一旦解散しますが、それぞれの主要メンバーらは合流し、1889(明治22)年に改めて「総武鉄道」を旗揚げします。

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「へ」の頂点に近いJR小岩駅前(深川孝行撮影)

 そして鉄道局に提出した路線図は、現在の総武本線とほぼ同じの銚子~本所(JR両国駅)ですが、今度は不思議なほどスムーズに許可が下ります。実際、早くも同年4月に佐倉~八街間に仮免許が、そして同年12月には、小岩~佐倉間に本免許が授与されています。

「スピード認可」の背景には、日本陸軍の“無言の威圧”があったようです。

 明治維新後、国防と治安維持の強化を急ぐ政府は、帝都防衛のために、陸軍精鋭の歩兵第二連隊を、東京に近い佐倉に置きます。

 一方、陸軍は、文明の利器「鉄道」が軍隊の迅速移動や軍需輸送で威力を発揮すると理解していました。

 実際、1861~65年のアメリカ南北戦争や、1870~71年の普仏戦争での鉄道の活躍を研究しています。また、1878(明治10)年の西南戦争では、開通したての新橋~横浜間、大阪~神戸間の官営(国営)鉄道をフル活用し、大部隊を数日で九州に送っています。

 陸軍にとっては、有事の際にいち早く大部隊を帝都に送り、防備を固めるのが最重要任務です。

 佐倉と東京を結ぶ鉄道、つまり総武鉄道の早期開通は、国家戦略上の意味もありました。陸軍の威光を背景に総武鉄道が申請すれば、さすがの鉄道局も首を縦に振らざるを得なかったようです。

 また、「へ」の字のルート変更は、陸軍の要望でもあったようです。

 市川駅北部の国府台一帯に、陸軍の下士官(幹部)を養成する教育機関「教導団」や、陸軍病院を移転したため、交通の便を良くするため、近くに鉄道駅を必要としていました。

 その後鉄道は隆盛を極め、舟運は衰退の一途をたどりますが、「へ」の字により鉄道アクセスの恩恵から遠のいた行徳や、さらに先の浦安は長年にわたり、「陸の孤島」と呼ばれてしまいます。

 実際、小説『青べか物語』で、著者の山本周五郎が舞台の浦安を冒頭で「町は孤立していた」とたとえたほどです。

【利害対立】「へ」カーブを描く総武本線と、行徳船ルートを見る(地図と写真)

Writer:

1962年、東京生まれ。法政大学文学部地理学科卒業後、ビジネス雑誌などの各編集長を経てフリージャーナリストに。物流、電機・通信、防衛、旅行、ホテル、テーマパーク業界を得意とする。著書(共著含む)多数。日本大学で非常勤講師(国際法)の経験もある。

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コメント

3件のコメント

  1. 東京都心から千葉県への最短ルートは現在の東京メトロ東西線に近いものになるでしょう。このルートは道路が整備されたのも昭和になってからです。東京東部の軟弱地盤に明治時代の土木技術で鉄道を敷設できたのかという問題は無視できないと思います。もっとも現在の東海道本線も開業当初は用地確保できす海上を通る区間があったので何とも言えませんが。

  2. まあ、なんにせよへの字にしといて良かったんじゃない。

    昭和後期でも、結構、地盤沈下してた土地だからねえ。

    あ、両国駅は、昔は、確か両国橋駅じゃなかったっけ?

  3. いわゆる「鉄道忌避伝説」をあたかも事実であるかのように根拠も示さずに書く悪質な記事だと思います。

    「当時、物流の主役だった舟運(水運)の業界が、猛烈に反対したのが大きな原因のようです。」と根拠も示さず憶測で書きながら、

    その下には「既得権者の舟運業者たちは、仕事を陸蒸気(鉄道)に奪われると猛反対したのです。」と今度は断定的に書いています。

    ここまで書くからには同時代の明確な根拠・文献があるはずですし明示して然るべきですが、なぜ示さないのでしょうか?

    当然ながら、もし何も示せる根拠がないのであれば、実際に見たわけでもない明治時代の話を少なくとも断定的に結論付けて書くべきではありません。

    他の部分では根拠となる文献や資料を示しながら、肝心な部分でそれが欠けているので、残念ながらストーリー的な結論ありきの悪質な記事だと判断せざるを得ません。

    明確な根拠に基づかないにも関わらず、断定的な結論へとミスリードする記事は大きな誤解を招くので、今からでも訂正されるべきかと思います。

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