“二刀流”どころじゃない! 最低でも三刀流以上!? 現代戦闘機は超万能マシンだった なぜ“何でも屋”になる必要が?
現代戦闘機で純粋に「戦闘機」としての任務だけをこなすものは少なくなっています。そのかわり、さまざまな任務をこなせる「マルチロール機」が主流となっています。なぜでしょうか。
マルチな用途を求める傾向は今後も強くなっていく?
F-16やF/A-18は1970年代に登場しましたが、同時期にアメリカ以外でもマルチロール機の開発が進みます。これは、軍用機の開発コストがジェット化以降に高騰し、任務別に複数機種を揃えるのが困難になっていた事情も背景にあります。

たとえばフランスの「ミラージュ2000」(1978年初飛行)は、1980年代に対地・対艦能力が追加され、マルチロール化されました。また、1974年にはイギリス、イタリア、ドイツの3か国が共同で「トーネード」を開発。これも多用途機として高い評価を得ました。
さらに、これらの国にスペインを加えて開発されたユーロファイター「タイフーン」、フランスが独自に開発した「ラファール」は、2025年現在も第一線のマルチロール機です。
スウェーデンのサーブが開発したJAS 39「グリペン」も、1996年に運用を開始。低価格ながら制空、対地、偵察など幅広い任務に対応可能なうえ、運用コストもほかの国の戦闘機よりもかからないとされています。そのため、スウェーデン国内のみならず多くの国に採用されています。日本の航空自衛隊が運用するF-2や、調達が進んでいるF-35も、マルチロール機として設計・配備されています。
一方、旧ソ連を中心とする東側陣営でも同様の流れが見られました。1977年に初飛行し、1985年から運用されたSu-27は、公式には多用途を謳っていませんが、実質的にはマルチロール性能を備えていました。特に、ロシアが輸出用に開発したSu-30は、明確にマルチロール機として位置づけられています。
こうしたマルチロール機の実戦投入が本格化した1980年代当初は、「なんでも屋」に対する懸念の声もありました。しかし、1990年の湾岸戦争では、制空、対地攻撃、偵察、爆撃など幅広い任務を問題なく遂行し、その有用性が実証されます。その後は各国とも金銭的な事情を考えると、コスト削減という観点から、運用・開発されている戦闘機のほとんどが、マルチロール機化していくことになりました。
現在各国で開発中である、いわゆる第6世代戦闘機に関しては、これらの任務に加え、無人機の制御や命令などを行う必要性も出てきています。機体に乗るパイロットには、これまで以上にさらに“何でもできる”ジェネラリスト的なスキルが求められることになりそうです。
Writer: 斎藤雅道(ライター/編集者)
ミリタリー、芸能、グルメ、自動車、歴史、映画、テレビ、健康ネタなどなど、女性向けコスメ以外は基本やるなんでも屋ライター。一応、得意分野はホビー、アニメ、ゲームなどのサブカルネタ。
コメント