ぶっちゃけ「中国製旅客機」はボーイング・エアバスに勝てるのか? 肩を並べるのに“必要な要素”とは
民間旅客機製造市場へ近年本格的に参入し始めた中国ですが、成功へ何がカギになるのでしょうか。また、先を行くエアバスやボーイングなどが持つ経験の差を覆すことが出来るでしょうか。
そんなうまくいくの?→老舗と中国の違い
こうした勢いは、2025年6月に開催された世界最大級の航空関連展示会「パリ航空ショー」において、COMACがブースで見せた機体模型の並びようからも伺えます。並んだ模型の多さではC909が目立ち、C919は製造前の短胴・長胴タイプの派生型も加えることで“ファミリー化”をアピール。そしてC929は一番サイズの大きい模型が置かれました。
これは長年生産しているC909は販売数の多さを、C919のトピックとしてファミリー化を、今後の注目株であるC929は最も大きく――と変化をつけてそれぞれの実績と将来性を前面に打ち出してアピールしていたのです。
とはいえ、航空機の開発は往々にして技術的課題が山積し、ほとんどが計画通りに進みません。そのうえ、旅客機は外見が同じでも中身は航空会社ごとに装備機器が異なる“オーダーメイド”が一般に行われます。
これまで既存の旅客機メーカーたちはこうした“オーダーメイド”に対して、航空会社の様々な要望に応えるノウハウを蓄積してきました。こうしたメーカーと航空会社の間で醸成される“経験値”においては、C919のライバル機で、かつエアバスで最も売れている「A320」とボーイングの同ポジションのモデル「737」に迫るのは、一朝一夕に実現するとは考えにくいです。
また、C919の航続距離はA320と737より幾分短いため、海外航空会社へのセールス時に、これがウィークポイントにならないとも限りません。航続距離に余裕があれば、同じクラスの機体でも、路線展開に柔軟性が増すからです。
航続距離に影響する燃費を左右するエンジンもC919は現在外国製のCMFインターナショナル「LEAP-X1C」エンジンを搭載していますが、中国はこれに加え、国産エンジンの搭載を視野に入れて開発に取り組んでいます。将来はその中国産エンジンを搭載したC919の販売へむけ、野心を抱いているのは明らかです。
機体・エンジン共に中国製のモデルの展開も含め、中国がこの先の5年間、旅客機市場の開拓にさらに力を入れていくことは間違いありません。
Writer: 相良静造(航空ジャーナリスト)
さがら せいぞう。航空月刊誌を中心に、軍民を問わず航空関係の執筆を続ける。著書に、航空自衛隊の戦闘機選定の歴史を追った「F-Xの真実」(秀和システム)がある。
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