「イタリアの巨匠」が考案し「スズキ」が発売した「ロータリーエンジン搭載」の「バイク」 なんじゃそりゃ!? 今では超希少車に
ジョルジェット・ジウジアーロがデザインしたスズキ・RE-5という500ccモデル。一見普通のネイキッドバイクに見えますが、よく見るとヘッドライト上部には「茶筒」のような謎の物体が。このモデルの正体とはいかなるものなのでしょうか。
「茶筒」はパカっと開く
「『未来のエンジン』を搭載したバイクなのだから」という思いがあったのでしょう、RE-5のデザインは、プロダクトデザインの巨匠、ジョルジェット・ジウジアーロに依頼されました。ジウジアーロもノリノリだったのか、RE-5ならではの斬新な機能を持たせました。
冒頭で触れた「茶筒」状のメーターハウジングは、メインキーをオンにすると、パカっと開く仕組み。閉じる際は手動ですが、内部には速度計と回転計、発光ダイオード採用のインジケーターや水温計が配列されています。
「大事な計器類だから茶筒の中に……」という理由だったのかどうかはさておき、なかなかにスペイシーな意匠のメーターボックスです。おそらくはメーターと対になるようにテールランプもデザインされ、それに合わせて、「カプセルトイ」風のウインカーも考案したのではないか、と筆者は推測しています。
「未来のエンジン」を搭載し、先鋭的なデザインを備えたRE-5は、輸出先の各国で高い評価を受けました。しかし、発売の前々年1973年に起きたオイルショックの影響を強く受けることとなります。
ロータリーエンジンは、回転が滑らかでスムーズな加速が特徴でしたが、燃費の悪さが難点でした。そこへオイルショックが重なり、輸出台数での販売は低迷。結果として、販売開始から約2年で生産・販売が打ち切られることになりました。販売台数はわずか6000台ほどだったとされています。
わずかに残る中古車は400万円オーバーの高値
商業的には失敗となったRE-5ですが、スズキがこのバイクにかけた開発・研究は決して無駄ではなく、後のスズキにおけるエンジンづくりに大きな影響を与えたとも言われています。
また、結果的にロータリーエンジン搭載の日本製バイクはこのRE-5のみとなり、ジウジアーロによる独創的なデザインと合わせて、今なお語り継がれる1台となっています。
日本国内での現存数は非常に少なく、まさに珍車中の珍車ですが、わずかに中古車が出回っており、その価格は400万円を超えることも。幻のモデルゆえの高額ぶりですが、もし機会があれば、あの「茶筒」をパカっと開けて、ロータリーエンジンならではの乗り味を体感してみたいものです。
Writer: 松田義人(ライター・編集者)
1971年、東京都生まれ。編集プロダクション・deco代表。バイク、クルマ、ガジェット、保護犬猫、グルメなど幅広いジャンルで複数のWEBメディアに寄稿中。また、台湾に関する著書、連載複数あり。好きな乗りものはスタイリッシュ系よりも、どこかちょっと足りないような、おもちゃのようなチープ感のあるもの。
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