バードストライク発生数「1日4.6件」! 対策はハイテクとアナログの合わせ技 “エンジンに鶏肉撃ち込む試験”まで
2024年のバードストライク発生件数は1687件と過去最多を記録しました。たかが鳥と侮るなかれ、その衝撃は想像を絶するものです。空港ではいったい、どのような対策が行われているのでしょうか。
衝撃は「10m上から力士が落下」するのと一緒
航空需要の回復とともに、飛行機に鳥が衝突する「バードストライク」が急増しています。
2023年の日本国内における発生件数は1687件に達し、過去最多を更新しました。これは単純計算で1日当たり4.62件になります。
特に羽田空港での発生が圧倒的に多く、渡り鳥が移動する7月から11月にかけてがピークとなります。
たかが重さ数kgの鳥がぶつかった程度で、巨大な飛行機が危険な状態になるのかと疑問に思うかもしれません。しかし、物理の法則は残酷です。
離陸時の飛行機は約300km/h(約83m/秒)のスピードで前進しています。ここに重さ1kgの鳥が衝突したと仮定すると、その衝撃力は数tにも達します。衝撃力は「速度の二乗」の計算になります。
これを人間に置き換えると「体重150kgの大型の力士が、ビルの4階(約10m)から落ちてきて激突する衝撃」に匹敵します。
あるいは「速度50km/hで走る原付バイクが壁に激突するエネルギー」と同じと言えます。これだと、その破壊力が想像できるでしょう。
飛行機のエンジンは、このような凄まじい衝撃に耐えられるよう設計されています。その頑丈さを証明するために行われるのが、通称「チキン・ガン」と呼ばれる試験です。
これは文字通り、圧縮空気を使った大砲で鳥を弾丸のように発射し、回転しているジェットエンジンに撃ち込むというものです。標準的なサイズとして重さ4ポンド(約1.8kg)の物体が、300km/hから最高670km/hもの猛スピードで発射されます。
かつてはスーパーマーケットで売られているような食用の鶏をそのまま使用していましたが、現在は規格を統一するため、ゼラチンの塊で作られた「人工鳥」を使うことが増えています。
この試験でエンジンの羽根が欠けても、外側に飛び散ったり火災を起こしたりせず、安全に停止できれば合格となります。「ひどく汚い試験」とも呼ばれるこのテストをクリアして初めて、エンジンは空を飛ぶのに使えるのです。





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