気球が最新の自衛隊装備に!? 人工衛星でも飛行機・ドローンでもない「成層圏の新たな主役」が注目される理由

陸上自衛隊主催のフォーラムで、北海道の宇宙開発企業・岩谷技研が提案する「高高度ガス気球」が出展していました。高度2万mの成層圏へ低コストかつ迅速に到達できる特性は、通信や監視など防衛分野でも活用できそうです。

ロケットよりも低コスト、航空機よりも高高度OK

 岩谷技研が高高度ガス気球のメリットとして挙げていたのは、以下の3点です。

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2024年7月17日に行われた有人フリーフライト試験で到達した高度2万816mの窓外の風景。このときの飛行距離は41k、飛行時間は4時間56分であった(画像:岩谷技研)。

低コスト:ロケットや人工衛星と比較して、圧倒的に安価な運用が可能。

即応性:打ち上げ準備(リードタイム)が短く、放球後わずか1~2時間で高度2万mに到達する。

柔軟性:観測・通信・実験など、ミッションに応じて多様な機器を搭載できる(多用途性)。

 UAV(無人航空機)やドローンを含む航空機は運用の自由度こそ高いものの、航続距離や高度に限界があり、成層圏(高度20km付近)を長時間飛び続けるのは困難です。そういった点で、高高度ガス気球は、人工衛星と航空機の間に存在する「高高度の空白域」を補完するキャリアとして、極めて高い将来性を持っています。

 岩谷技研は、成層圏(高度20~25km)に簡便にアクセスできる唯一無二のキャリアとして、最大1t程度のペイロードを、低コストで打ち上げ可能にすることを目標に掲げています。

 2023年に北米上空を飛行した中国の気球が国際的な議論を呼んだことは記憶に新しいですが、それゆえに高高度気球の有用性と脅威への対処は、防衛当局にとっても急務の課題となっています。

 近い将来、高高度ガス気球は人工衛星や航空機と並び、官民双方で欠かせないインフラ、そして「装備品」として重用される存在になっているかもしれません。

【意外と広い!?】これが高高度ガス気球のキャビン内部です。パイロットの服装にも注目!(写真)

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