史上唯一!「音速を超えた水上機」ジェット戦闘機に“スキー板”を履かせた米軍の挑戦「異形の怪鳥」はなぜ消えたのか?

空母がまだ小さかった時代、アメリカ海軍は「海そのものを滑走路にすればいい」という驚天動地の発想で、ジェット水上戦闘機「シーダート」を開発しました。水上スキーで離水し、音速すら突破したこの“異形の怪鳥”は、なぜ歴史の闇に消えたのか。その数奇な運命を辿ります。

唯一無二の「音速突破」達成、しかし時代は空母を選んだ

 ところが1954年11月4日、増加試作のYF2Yの1号機がデモフライト中に空中分解を起こして墜落し、コンヴェア社のテストパイロット、チャールズ・リッチバーグが殉職。しかも、繰り返し実施された試験飛行の結果、レシプロ水上機と同じく海が荒れれば離着水が困難になることが判明します。

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水上スキーのような軽量の降着装置を下げ、着水する態勢をとったF2Y「シーダート」(画像:アメリカ海軍)。

 一方、アメリカ海軍は、大出力のカタパルトと離着艦が容易なアングルドデッキを備えた、より大型の空母の建造を決定します。これにより、空母の上でも大型化するジェット機の運用が可能になったので、ジェット水上戦闘機の優位性は失われてしまいました。

 結果、「シーダート」はプロトタイプのXF2Yと増加試作機のYF2Y、双方合わせて計5機が生産されたところで、開発中止となりました。なお、これらは試作機だったため、固定武装は備えられていませんでしたが、正式採用・量産化された暁には20mm機関砲4門の搭載が予定されていました。

 なお、1960年代に入ると垂直離着陸が可能な戦闘機として「ハリアー」がイギリスで誕生し、旧ソ連(ロシア)やアメリカでも同種の戦闘機が開発・量産されているため、以降、ジェット水上戦闘機というものは生まれていません。まさに「シーダート」は時代のあだ花的存在だったと言えるでしょう。

【写真】これが空を舞う「シーダート」の姿です(カラーで見る)

Writer:

東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。

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