史上唯一!「音速を超えた水上機」ジェット戦闘機に“スキー板”を履かせた米軍の挑戦「異形の怪鳥」はなぜ消えたのか?

空母がまだ小さかった時代、アメリカ海軍は「海そのものを滑走路にすればいい」という驚天動地の発想で、ジェット水上戦闘機「シーダート」を開発しました。水上スキーで離水し、音速すら突破したこの“異形の怪鳥”は、なぜ歴史の闇に消えたのか。その数奇な運命を辿ります。

水上機なら空母積載の制約受けないでしょ

 飛行機には、陸地や空母から離着陸(離着艦)する陸上機(艦上機)の他に、水面で離着水する水上機(飛行艇)があります。かつてアメリカ海軍は、その水上機の動力をジェット・エンジンにした、ジェット水上戦闘機の開発を試みたことがありました。

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海面を滑走するF2Y「シーダート」。写真は試作機なので非武装だが、量産型では20mm機関砲4門の搭載が予定されていた(画像:アメリカ海軍)。

 ジェット機は1930年代に誕生すると、その直後に始まった第2次世界大戦で軍用機として量産され、兵器として実用化の域に達しました。そして終戦直後から、急速な発達を遂げると、戦闘機や爆撃機の分野では主力装備となっていきました。

 こうした流れで、アメリカ海軍もジェット艦上戦闘機を開発しますが、初期のジェット・エンジンは、プロペラ駆動のレシプロ・エンジンに比べてスロットルのレスポンスが遅く、レシプロ艦上機に慣れたパイロットには、ゴーアラウンド(着陸復行)がやりにくいという問題を抱えていました。

 さらにジェット機の進歩状況をみると、確実に大型化の途を歩んでいるにもかかわらず、第2次大戦が終結したばかりで軍事費が削減され、そうすぐには大型化したジェット機を運用できる「大きな空母」は造れないという、政治的な問題もありました。

 そこでアメリカ海軍は、水上機に目を付けます。空母に搭載しようとすると、ジェット機はその「巨体」ゆえに制約を受けます。しかし、広大な海面を滑走路代わりに利用できるのなら、スロットルのレスポンスの遅さも問題ありません。加えて、性能向上のために、将来的に機体が徐々に大型化したとしても、運用に困る心配がないと考えられました。

 確かにフロートという「重荷」が造り付けになっている水上機は、レシプロ機時代には性能面で艦上機に太刀打ちできませんでした。しかしジェット水上機の場合、空母での運用を考慮しなくて済むため、フロートに代えて引き込み式の水上滑走用スキー板を装備すれば、かつてとは逆に「艦上機用の頑丈な脚」という「重荷」が不用になるうえ、艦上機より大型・高出力の重いジェット・エンジンを運用上の障害なく搭載できるので、問題は解決すると考えられました。

【写真】これが空を舞う「シーダート」の姿です(カラーで見る)

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