原油輸送40日が“100日”に ホルムズ海峡だけじゃない「二重の封鎖状態」 燃料不足で「研究船も練習船も出せないかも」影響ジワリ
米国・イスラエルによるイラン攻撃でホルムズ海峡が事実上の封鎖状態に陥って1か月。ペルシャ湾内に閉じ込められた日本関係船の現状と、日本経済への影響について、日本船主協会が会見しました。
原油9割依存の日本を襲う「二重の封鎖」
政府は3月19日、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、オランダと共同でイランに対し商船の航行を妨害する一切の行為を停止することを求める声明を発表。国土交通省もバーレーンやUAE、パナマ、メキシコ、シンガポールと共同で、ペルシャ湾内から船舶の安全な避難を可能にする海上回廊などの枠組み構築をIMO(国際海事機関)の臨時理事会に提案しています。
一方で、原油の9割を中東諸国から輸入している日本にとってホルムズ海峡の封鎖が長引けば長引くほど、経済に大きなダメージを受けることになります。現時点で邦船の運航に大きな支障は出ていないものの、原油の供給は世界的に減っており、状況が悪化し続ければ外航海運だけでなく内航海運の運航にも支障が出てくる可能性があります。
燃料コストの上昇は企業の収益悪化やインフレによる個人消費の停滞へとつながりますし、プラスチックなど石油化学製品の原料となるナフサ不足は生活全般に影響が出ることが懸念されるでしょう。
さらに長澤会長は「現在、フーシ派の武力攻撃に伴って、紅海とアデン湾を結ぶバブ・エル・マンデブ海峡が通航できず、ホルムズ海峡と合わせて二重の封鎖状態となっている」と切迫した状況を説明します。
サウジアラビアの紅海側(西側)に位置するヤンブー港では原油の積み込みは可能であるものの、今度はイエメンの親イラン武装組織フーシ派によって安全が脅かされているため、インド洋からアデン湾を経由して紅海に入るのが難しいのが現状です。長澤会長は「アデン湾と紅海の間はフーシ派のリスクがあるので、なかなか通れない」と話します。
「そうすると、南アフリカの喜望峰を周って地中海を通り、スエズ運河から紅海に入ってヤンブー港で積み込み、またずっと帰ってくるしかない。ペルシャ湾だと大体40日ぐらいで往復できるが、今言ったルートでは100日はかかる。しかもスエズ運河はVLCC(大型原油タンカー)が喫水の関係で満載にはできない」(長澤会長)
すでに燃料調達に起因する影響も出ています。JAMSTEC(海洋研究開発機構)は重油のサプライヤーから予定していた燃料の補給ができないとの連絡を受け、4月以降の航海について中止や計画変更を検討しています。対象となるのは深海潜水調査船支援母船「よこすか」、海底広域研究船「かいめい」、東北海洋生態系調査研究船「新青丸」の3隻で、海洋研究の活動に大きな影響が出る可能性があります。
海技教育機構(JMETS)も帆船「海王丸」の遠洋航海は予定通り行うものの、その他の練習船については運航が見通せない状態です。
長澤会長は、「日本の国民生活を守ることは、我々の使命だと考えている。原油の備蓄量がどんどん減って本当に油がなくなっていったとき、政府からの要請や、石油会社がやるということであれば、我々としては真剣に検討し、期待に応えていく」としました。
Writer: 深水千翔(海事ライター)
1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。





コメント