核ミサイル原潜を“魔改造”!? 電撃作戦を密かに支えた米軍「最強兵器」の多才ぶり 日本はマネできるのか?
アメリカ海軍には、戦略原潜から改造されたSSGNという特殊な潜水艦が存在します。巡航ミサイル154発という圧倒的な火力と特殊部隊の母艦機能を併せ持つSSGNは、日本の防衛にも示唆を与える存在です。
日本の潜水艦は「SSGN化」する?
SSGNへの改装内容は大胆でした。SSBNの直径約2.2mの弾道ミサイル発射管24基のうち22基を、巡航ミサイル用の垂直発射装置に変更。1基あたり最大7発のトマホーク巡航ミサイルを格納でき、合計で最大154発という圧倒的な火力を持つに至りました。ミサイルは非核の通常弾頭です。残る2基は特殊部隊用のロックアウト・チャンバーに改装され、ドライ・デッキ・シェルターを搭載してネイビーシールズなどの特殊部隊を秘密裏に出撃・帰還する能力を備えました。
その結果、オハイオ級SSGNは一隻で水上戦闘群に匹敵する巡航ミサイル打撃力、原子力潜水艦ならではの秘匿性と航続力、特殊作戦の母艦としての機能を併せ持つ存在となりました。これは、どの水上艦や航空機にも代替できない多才な能力です。水中排水量1万8000tにもなる巨大原潜を「対テロ戦争」に使おうとは、条約対応の「苦し紛れ」の改造に見えましたが、結果的に唯一無二の「汎用兵器」になったわけです。
SSGNが初めて本格的に実戦投入されたのは、2011年のリビア空爆「オデッセイ・ドーン作戦」でした。作戦最初の段階でアメリカとイギリス艦艇から112発のトマホークが発射され、防空網や重要拠点を一気に無力化しています。その中にオハイオ級SSGN「USSフロリダ」も含まれていました。
その後もSSGNは、中東を中心に繰り返し展開されてきました。近年では、2025年6月に実施されたイラン核施設への大規模攻撃で、SSGNが攻撃を実施したことをアメリカ戦争省が公式に認めています。
ここで重要なのは、SSGNが「いつ、どこから撃ったのか」がほとんど語られない点です。前触れもなく防空圏外から大量の精密打撃を行い、作戦終了後は再び海中に消える。「使えない戦略兵器」SSBNから「使える汎用兵器」SSGNになったことが最大の価値といえるでしょう。
では、日本はどうでしょうか。「スタンド・オフ防衛能力」の強化を掲げ、潜水艦から発射可能な国産誘導弾の開発と量産を進めています。現時点では、既存の潜水艦の魚雷発射管から発射する方式が採用されています。
この方式は比較的すぐに戦力化できますが、ミサイルの直径は魚雷と同じ533mm以下という制約があり、搭載できるミサイルの大きさや種類が限られます。また、魚雷運用も制限されます。垂直ミサイル発射システム(VLS)を導入すれば、搭載弾種の自由度や運用の柔軟性は大きく向上します。
海洋国家である日本にとって、潜水艦は抑止力となる「戦略的アセット」です。秘匿性の高い潜水艦から状況に応じて地上にも強力な打撃を与える。声高に誇示する兵器ではなく、静かに存在感を発揮するSSGN的発想も専守防衛の日本に必要です。
Writer: 月刊PANZER編集部
1975(昭和50)年に創刊した、50年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。





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