旧陸軍の「遺物」が現役…!? 使い勝手の良い鉄道連隊の「生き証人」、まだ身近に存在するかも?

旧日本陸軍の鉄道連隊が使用した貨車が、戦後80年以上を経た今も、日本の地方私鉄の車庫で“現役”として使われています。

湊線に残存する一つの仮説

 湊線に九七式貨車が残存する理由は謎ですが、仮説として「弾薬処分用のために使用されたではないでしょうか」と、ひたちなか海浜鉄道おらが湊鐵道応援団の星秀憲さんは言います。

 1945(昭和20)年10月、進駐軍の命によって旧日本軍の武器弾薬は処分され、一部は那珂湊沖へ海中投棄されることになりました。輸送は鉄道となり、湊線の前身である茨城交通の那珂湊駅構内から那珂湊港までの市中に突貫工事で線路が敷設され、同年12月から武器弾薬を積載した貨物列車が国鉄線と湊線を経由して運転されました。

「九七式貨車は弾薬輸送として使用されたのかも。弾薬輸送の臨港線は資料に乏しくて謎が多いですが、九七式貨車が多い理由も謎です」。星さんは腕を組みます。

 九七式貨車はこの輸送に携わったのか、明確な記録は見つけきれていませんが、線路敷設に活躍する車両ゆえに鉄道連隊から供出され、港までの線路敷設に使用された後、何らかの経緯で湊線へ払い下げられ、保線車両として使用されてきたのではないかとも考えられます。

 九七式貨車の出自は推測の域を出ませんが、湊線には数多くの九七式貨車が使用されてきたのは事実です。機関区内の2台について、ひたちなか海浜鉄道では「今のところは使用していきます」との談。末長い活躍を願っています。

 なお、九一式と九七式貨車は、三岐鉄道にある貨物博物館で保存車両として保管されています。ひたちなか海浜鉄道以外では、阪堺電気軌道の我孫子車庫に1435mm軌間の保線用貨車として九七式貨車が存在します。

 最後に、どうやって九一式と九七式貨車を見つけられるか。他の保線台車よりも軸受けと台枠が重厚な形状で、車軸と車輪の間にスペーサーが咬まされていたら、ほぼ間違いないと思います。

 九一式と九七式の差異は、寸法が近似しているので見分けがつきにくいものの、連結面側の“丈”部分が九一式は連結器部分のみ幅広で、九七式は連結面全体が幅広(130mm)です。軸受け部も多少の差異があり、九一式は軸受け部の外周に補強板がせり出しています。

 九一式と九七式貨車は、車両基地の片隅に放置されていることもあります。鉄道会社の車庫見学の際に見つかるかもしれません。

【現役】旧陸軍の「生き残り貨車」を見る(写真)

Writer:

1977年、東京都生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業後、建築模型製作会社スタッフを経て空撮会社へ。フリーランスとして空撮のキャリアを積む。10数年前から長年の憧れであった鉄道空撮に取り組み、2011年の初個展「空鉄(そらてつ)」を皮切りに、個展や書籍などで数々の空撮鉄道写真を発表。「空鉄」で注目を集め、鉄道空撮はライフワークとしている。空撮はもとより旅や鉄道などの紀行取材も行い、陸空で活躍。日本写真家協会(JPS)正会員、日本鉄道写真作家協会(JRPS)会員。

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