なぜ軍用機の「迷彩」は統一感ない? 灰色・青色・緑に茶… バラバラに見えて法則性あり!
さまざまな兵器のなかでも軍用機は特に迷彩パターンの種類が豊富です。なぜ、多彩な迷彩が存在するのでしょうか?
下からの敵に対して、空に紛れる迷彩パターン
続いて、下からの発見を遅らせるための迷彩を紹介しましょう。
海上自衛隊が2010年代に導入したP-1哨戒機は、淡いブルーの塗装が印象的です。これは潜水艦から見られることを想定し、空の色を平均化した色調が採用されたといわれています。海上自衛隊のC-130輸送機も、同じ色調で塗装されています。
P-1とあわせて開発された航空自衛隊のC-2輸送機に採用されているブルーグレーの塗装パターンも、同様の目的だと考えていいでしょう。こちらは地上から、携帯式地対空ミサイルシステム(MANPADS)で狙われることを想定したものとされています。
戦闘機でも下からの敵を想定した迷彩があります。アメリカ空軍のF-15Eは濃いグレーの塗装を採用していますが、これは夜間に精密爆撃を実行する任務が多いため、夜空に紛れるような色調にしていると考えられています。
完全な黒にすると、月明かりのある空で逆に目立つ危険があり、あえてグレーを採用しているようです。B-1B爆撃機も夜間の爆撃任務が多いため、濃いグレーの塗装が採用されています。
宵闇に紛れて作戦行動をするのは、特殊部隊も同じです。秘密裏に行動するため、特殊部隊が襲撃時に使用するヘリコプターは濃いグレー、もしくは真っ黒に塗装されており、飛行中に地上から存在を気付かれないよう、工夫されています。
さて、ここまで見てきたように、迷彩パターンは任務や役割に応じて、想定される敵の位置の違いから決定されています。そのため同一の機種でも、任務ごとに異なる迷彩を用いることがあります。そのことを明確に示した例が、2003年から2009年にかけて、イラク特措法に基づいて中東に派遣された航空自衛隊のC-130輸送機です。
通常時、航空自衛隊のC-130輸送機は低高度の戦術輸送に使われるため、日本で多い針葉樹林を想定した濃い緑を基調とした迷彩パターンが施されています。しかしイラク派遣用の機体は、明るい空色に塗装されたのです。
当時のイラクは、組織的な抵抗は終わっていたとはいえ、まだまだ民兵レベルでは散発的な攻撃が続いていました。そのような中で、日本国内仕様の迷彩では目立ってしまい、離着陸時などを地上からMANPADSや、RPG-7のような対戦車ロケットで攻撃される恐れがありました。そこで現地の空の色を研究し、それに合わせた色調で機体を塗り替えたのです。
幸い、C-130は無事に任務を終えて帰国しましたが、それからしばらくは、イラク派遣仕様の空色と、通常の緑色の迷彩とが同居する不思議な光景が見られました。
このように、軍用機は任務と想定される敵の位置によって、様々な迷彩パターンが存在します。軍用機を見る際、迷彩からどのような任務に使われるか考えると、より深く理解が進むのではないでしょうか。
Writer: 咲村珠樹(ライター・カメラマン)
ゲーム誌の編集を経て独立。航空宇宙、鉄道、ミリタリーを中心としつつ、近代建築、民俗学(宮崎民俗学会員)、アニメの分野でも活動する。2019年にシリーズが終了したレッドブル・エアレースでは公式ガイドブックを担当し、競技面をはじめ機体構造の考察など、造詣の深さにおいては日本屈指。





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