米軍基地に「掩体を増やしましょう!」 なぜ日本の予算とヒトで“やってあげる”のか? その深いメリット

日本の経費負担で在日米軍基地の防護能力を強化する案が検討されています。一見すると日本の予算がアメリカに吸い取られるようにも見えますが、実はこれ、自衛隊にとっても大きな意味を持つようです。

米軍基地の強化が自衛隊にもたらす“恩恵”

 じつは、このアメリカ軍基地における航空機掩体などの整備は、自衛隊にとっても非常に大きな意味を持つことになると筆者(稲葉義泰:軍事ライター)は考えます。

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アメリカ空軍嘉手納基地の簡易ハンガー。航空自衛隊の航空機隠蔽用施設もこれと同様の構造(乗りものニュース編集部撮影)。

 自衛隊では、2022年12月に閣議決定された防衛力整備計画において、防衛施設強靭化のために2023年度から2027年度までの5年間で約4兆円の予算を投じることとしており、そのなかにミサイル攻撃などへの抗堪性強化といった、今回と同趣旨の施策も含まれています。

 しかし、この抗たん性強化については、その他の施策と比べて若干消極的な印象を受けます。

 というのも、この防衛施設強靭化の中で最も多くの予算が割り当てられているのは老朽化した施設の更新や集約整理、重要施設の地下化などで、その金額は5年間で約1兆7000億円にのぼります。一方で、抗堪性強化に資する取り組みに割り当てられているのは5年間で約4000億円、つまり全体の1割程度の金額に過ぎません。

 しかも、その内容にも若干問題があるように思われます。防衛省が明らかにしているところによると、この抗堪性強化に含まれているのは主に主要司令部の地下化、航空機を分散して配置するための分散パッドの整備や航空機隠蔽用施設(衛星による上空からの監視を避けるための簡易的な覆い)などで、航空機用掩体については緊急発進用の戦闘機を格納するための「アラートハンガー」の掩体化が盛り込まれているのみです。

 航空機隠蔽用施設はテントやシェードのようなものに過ぎず、敵の攻撃に堪えうるものではありません。つまり、直接的に敵の攻撃から航空機を防護するための施策については、極めて限定的な内容にとどまっているわけです。

 これにはいくつか理由が考えられますが、一つには基地の敷地不足が挙げられます。航空機用掩体は、分散パッドや航空機隠蔽用施設などと比べてより多くの敷地を必要とします。現在、航空自衛隊の基地にはそれを造成するための十分な敷地面積がなく、また周辺の土地を買収して基地面積を拡大するのも困難なため、航空機用掩体の大規模な整備が難しいのです。

 そこで、在日米軍施設の抗堪性強化が重要になってきます。有事の際、自衛隊の航空機は全国の基地や民間空港等への分散展開により地上での被害を極小化することになると思われますが、そこには在日米軍基地も含まれる可能性があります。もし、在日米軍の嘉手納基地や岩国基地、厚木基地や三沢基地などに新たに航空機用掩体を増設することができれば、航空自衛隊の戦闘機をそこへ収容することも考えられます。

 もちろん、これと並行して、たとえ少数でも航空自衛隊の基地内に航空機用掩体を増設すべきだと筆者は考えますが、いずれにせよ有事の際に運用可能な戦闘機を1機でも増やすためには、このような取り組みをさらに進めるべきではないでしょうか。

【これで航空機を守れる?】航空自衛隊の「アラートハンガー」を写真で見る(画像)

Writer:

軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。

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