高架下に“歴史と情報”がギッシリ! マニアックな展示も楽しめる「地下鉄博物館」、記念の年に向けた“次の一手”は?
東京メトロ東西線葛西駅の高架下にある地下鉄博物館が、2026年7月に開館40周年を迎えます。日本初の地下鉄専門ミュージアムとして誕生した同館は、限られたスペースながら充実した展示で、現在も多くの人々を魅了しています。
一見地味ながら「貴重」な展示も
運転体験といえば、博物館のために新造された千代田線「6000系」の運転シミュレータです。運転席の前方映像、走行音、各種機器はもちろん、実車の加速・ブレーキ性能、勾配等の線路条件、信号条件が完全再現された本格仕様です。
1993(平成5)年には職員が使用する研修用シミュレータと同等の油圧式動揺装置を設置し、走行中の左右動、加減速時の前後動、対向列車の風圧による動揺まで再現しています。今でこそ同様の運転シミュレータは様々な鉄道博物館で見られますが、当時は例のないもので、高い人気を誇りました。
一見地味ながら貴重なのが「トンネルの輪切り」の展示です。直径6.7mの実物の単線シールドトンネルに、レールや剛体架線、送電・通信ケーブル、蛍光灯などを設置し、普段は見られないトンネル内を完全再現しています。「建築限界」と「車両限界」を示す枠が設置され、隣には軌道モーターカー(作業用車)が鎮座するマニアックな仕様です。
この他、地上からは見えない地下鉄だからこそ、地形の起伏やトンネルの勾配、立体交差構造や、建設現場のシールド工法を断面図で再現した各種ジオラマも見どころです。
地下鉄博物館は2002(平成14)年7月に大規模リニューアルに着手します。開館16年目という中途半端なタイミングですが、これは博物館が入る東西線高架橋の耐震補強工事が必要になったから。2003(平成15)年6月まで1年弱にわたり休館して、大規模な改装が行われました。
リニューアル最大の目玉は、丸ノ内線中野車両基地で保存されていた300形「301号車」の展示です。搬入にあたり博物館建物の壁、天井、柱の一部を撤去しており、まさに工事のタイミングでなければ実現しなかったものでした。1000形の隣に並べられました。
開館20周年の2006(平成18)年には、副都心線建設工事で使用した実物のシールドマシンカッターディスク、開館30周年の2016(平成28)年には、同年に完全引退した銀座線01系車両のカットボディが展示されました。
運転台部分のみ、台車もない状態なのは残念ですが、大型の車両を展示するスペースはなく、301号車の例からしても搬入そのものが困難でしょう。東京メトロは日比谷線3000系「3001号車」など、いくつかの保存車を有しており、将来的にはこれらも展示したいところです。
地下鉄開通100周年に向けて地下鉄博物館の移転、拡張が議論された時期もあったようですが、コロナ禍で全て吹き飛んでしまいました。「最後の新線」である有楽町線、南北線延伸部は、地下鉄博物館が50周年を迎える2036年頃の開業を予定しています。建設時代の締めくくりとして博物館の移転、拡張が検討されることを期待します。
Writer: 枝久保達也(鉄道ライター・都市交通史研究家)
1982年、埼玉県生まれ。東京地下鉄(東京メトロ)で広報、マーケティング・リサーチ業務などを担当し、2017年に退職。鉄道ジャーナリストとして執筆活動とメディア対応を行う傍ら、都市交通史研究家として首都圏を中心とした鉄道史を研究する。著書『戦時下の地下鉄 新橋駅幻のホームと帝都高速度交通営団』(2021年 青弓社)で第47回交通図書賞歴史部門受賞。Twitter:@semakixxx





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