たった1機の旅客機で1000人超を運べ! 世界記録出した壮大な救出劇「なんで飛行中に乗客増えてるの!?」
世界最大の旅客機ボーイング747-200が実現した乗客数世界記録の背景には、1万4000人を救出した大規模な軍事作戦がありました。
離陸時より着陸時のほうが「乗客が多い」奇跡
1991年5月24日、この機体はアディスアベバを1086人の乗客とともに離陸しました。通常、747-200の標準的な座席数は400人強であることを考えれば、実に定員の2倍以上を搭乗させていたことになります。もちろん、これは通常運航ではあり得ず、乗客の多くは床にそのまま座り込み、わずかな手荷物だけを携え、ただ安全な地へ避難することだけを願って機内に身を寄せていたのです。
しかし、この飛行にはさらに驚くべき結末が待っていました。同機がテルアビブ国際空港へ向かう4時間の飛行中に2人の女性が出産したのです。つまり、アディスアベバを飛び立った時点では1086人だった搭乗者数は、テルアビブへ着陸した瞬間には1088人へと増加していたのです。離陸時より着陸時のほうが2名も乗客数が多いという稀な出来事がこの歴史的フライトで発生しました。
数字だけを見れば、1088人という記録は珍事に映るかもしれません。しかし当のユダヤ人たちにとって、その本質はむしろ数字の背後にある人間の物語にあります。内戦の混乱から逃れ、ユダヤ人の祖国へ向かう人々で埋め尽くされたジャンボジェット。その機内で2人の新しい命が誕生したという事実は、まるで約束の地への旅路そのものが、一つの象徴であったかのような印象を与えました。
ボーイング747は大量輸送時代を切り開いた航空機として記憶されています。エルアル航空のこの一件で達成された1088人という空前絶後の乗客数は、その特殊性がゆえに通常の航空便では塗り替えることがほぼ不可能であり、今後も長く世界記録として君臨し続けることとなるでしょう。
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。





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