モンキーより小さい「公道走れる世界最小バイク」はこうして生まれた! まさに“伝説” 元ホンダエンジニアのスゴすぎる半生

「公道を走れる世界最小バイク」を開発したCKデザインの佐々木和夫さんは、元ホンダの技術者でした。その波乱万丈のバイク人生と仔猿開発秘話を聞きました。

ついに完成した「世界最小バイク」仔猿

 90年代に入ってからは車椅子や車椅子関連器具、明治乳業の宅配ボックス、東武鉄道のバスなどの開発に関わる一方、GMフォードの四輪開発、古巣ホンダのエンジン開発など、幅広い分野での開発を初めて行きます。そんな中で、いよいよ佐々木さんが「本当にやりたいのは、こういうことだった」という開発が実現します。

 それが、佐々木さんの79年のバイク人生の代表作と言って良い、「公道を走れる世界最小バイク」仔猿の開発でした。

「たまたまホンダを訪れた際、ホンダ関係者から『最近作った』という『汎用エンジン』を見せられたんです。『いろんな使い道があり、信頼性も高い汎用エンジンです。このエンジンを使って、佐々木さんが考えた何か新しいことができないものか』と言われまして。

 そこから、その汎用エンジンを取り寄せて自分で解析。『オートバイに使ったとき、ちゃんと走るのか』みたいなところから始めて、『この小さなエンジンで何ができるだろうか』と考え始めたわけだけど、結果的に『これはいいぞ』と思えたのが、50ccのモンキーよりさらに⼩さい31ccエンジンのバイクに仕上げること。そこで『仔猿』という名にして売り出すことにしたんです」

 当初、佐々木さんはホンダの31cc汎用エンジンを使いながら、コンプリートバイクとしての「仔猿」の販売を予定していたそうですが、後に「キットバイクにして販売しよう」と思いつきます。

「一番初めの『仔猿』は100台でしたので、バラバラのパーツを前に僕が1人で組むつもりでいました。しかし、『いやキットバイクにしても良いな』と思い始めて。『仔猿』みたいな小さいエンジンのバイクを好む人は、僕と同じように『作る』ことが好きな人が多いかもしれないと思って。これは結果的に大正解。オーダーが入って、宅急便でキットのまま送ると『組めましたよ!』とか『自分でバイクを組み上げるのが面白い!』なんていう声が届いたりして。僕にとってもすごく嬉しい出来事でした」

バイクは人生に良い影響を与える一番のホビー

 実は佐々木さんは「仔猿」がここまで注目を浴びるとは当初思っていなかったといいます。

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「バイクは⼈⽣に良い影響を与えるホビーです」と佐々⽊さん(画像:INTERNATIONAL MX)

「本来の僕は技術屋の人見知りで『他人と一緒に何かをやる』『他人と楽しみを共有する』といった経験が少し苦手なんだけど、『仔猿』以降は、そうやって交流が広まったりして毎日が楽しくなりました」

 そして、「仔猿」の様々な世代からのニーズを受けて、こんな風に考えるようにもなったといいます。

「たとえば、これまでにバイクに触れたことがない、まだ若い子どもたちに知ってもらえたらすごく良いなとも思うようにもなりました。子どもたちにとっては『バイクの組み立て』はハードルが高く感じるかもしれないけど、そこで壁にぶつかったとき、友達と一緒に情報交換や試行錯誤を重ねます。

 そのコミュニケーションや苦労も含めて、やっと組み上げることができた『仔猿』というキットバイクは、普通にお金を出して買ったコンプリートバイク以上に『特別な1台』になるんじゃないかなと思って。だから、これからはバイクに触れたことがない若い子たちにも『仔猿』を届けていきたいと思っています」

 最後に佐々木さんに、自身のバイク人生と重ねて、次世代を担う若者に対する思いも聞きました。

「バイクって、どの時代も『日本の親の世代』は『危ないから』と子どもを遠ざけがちでしょう。でも、そのバイクに乗っていることで、実は塾や学校で会う友だちばっかりじゃなくて、いろんな世代の、いろんな職業の人と出会うこともできるんです。確かにそこには、親が遠ざけたがるような『危ない人』『ヤンチャな人』もいるかもしれない。でも、無菌状態で過ごしていても、社会的人間力は身につかないと思います。転んだり、痛いめにあうこともあるから人間は学んでいくのであって。僕の人生を振り返っても、ここまでの通り失敗だらけでしたよ。

 でも、バイクがきっかけで本当にいろんな体験ができたし、孫くらい違う世代のバイク仲間もできたり、本当に楽しいことばかりでした。バイクって世界中では『キング・オブ・ホビー』と呼ばれていて、『同じバイクが好きだ』というだけで、言葉が通じない外国人同士でもすぐに友達にもなれるものでもあります。こんなに身近で、人生に良い影響を与えるものって、やっぱり僕にはバイクしか思い浮かびません。これからもバイクを楽しみながら過ごしていければ良いなと思っています」

【え、このバイクも作ってた!?】これが「世界一小さなバイク」開発者の“バイク遍歴”です(写真で見る)

Writer:

1971年、東京都生まれ。編集プロダクション・deco代表。バイク、クルマ、ガジェット、保護犬猫、グルメなど幅広いジャンルで複数のWEBメディアに寄稿中。また、台湾に関する著書、連載複数あり。好きな乗りものはスタイリッシュ系よりも、どこかちょっと足りないような、おもちゃのようなチープ感のあるもの。

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