道路ばかり造っても「渋滞は減らない」=世界の常識? 日本で浸透しない“あの手この手を駆使する”もう一つの方法とは?
道路を広げても「誘発需要」が生まれ、渋滞がなくならないことがあります。そこで注目されるのが、交通需要を管理する「TDM」です。その仕組みや国内外の事例を紹介します。
「駐車スペース逆に削減」「車通勤やめればインセンティブ」も
TDMは、需要を減らしたり分散させたりするために。クルマを排除するのではなく。自動車が必要な地域や利用者がいることを前提に、さまざまな手段を組み合わせます。
ノルウェーのオスロでは、都心部への自動車流入を抑制するため、ロードプライシング、駐車スペース削減、歩行者空間の拡大などを組み合わせたTDMを実施しています。単一施策ではなく複合的に需要を調整することで、都市中心部の自動車交通を抑えつつ、公共交通や徒歩・自転車への転換を進めています。
こうした複合的なTDMがいま日本で“焦点”となっているのが、熊本の都市圏です。以前から熊本市中心部への通勤交通が集中していました。そこに近年、半導体関連産業の集積が進み、菊陽町や大津町周辺の産業拠点へ向かう通勤需要も増加し、主要渋滞箇所数が3大都市圏を除く政令指定都市でワースト1位という状況になっています。
県や市は、自動車専用道の整備や交差点改良といった道路対策に加え、企業と連携したオフピーク通勤、パーク&ライド、豊肥本線原水駅と半導体産業集積地(セミコンテクノパーク)を結ぶ通勤バスなどでTDMに取り組んでいます。さらに、バス優先レーンで多くの人を運び、道路を効率的に使う議論も進んでいます。
深刻な渋滞に悩む米国では、二人以上が乗車する車両等を優先するレーン(High Occupancy Vehicle)のほか、Parking Cash Outと呼ばれる制度もあります。これは、企業が従業員に無料駐車場を提供する代わりに、駐車場を利用しない従業員には相当額の手当を支給する仕組みです。無料駐車場だけを優遇するのではなく、公共交通、自転車、相乗りなど複数の通勤手段を選びやすくすることで、自動車利用の集中を緩和しているのです。
道路を「造る」から「マネジメントする」時代へ
これからの渋滞対策は、「道路を造るか、クルマを減らすか」という対立ではありません。道路整備によって必要な容量を確保しながら、TDMによって交通が集中する時間や場所を調整する――こうした組み合わせが、人口減少や都市構造の変化が進む時代の新しい渋滞対策になりそうです。
とはいえ、こうしたTDMは日本ではまだ十分浸透しているとはいえません。
道路や橋などの建設は、できあがった物が見えますし、行政単独で実施できます。一方、これまで見たようにTDMは行政単独では行えず、企業や交通事業者、利用者との協力によって効果を発揮するソフト事業です。物が見えにくい点がハードルの一つとなっています。
しかし、財政の制約も進むこれからの時代には、道路拡張だけで渋滞対策を進めることはますます難しくなります。限られた道路空間の活用を考え、インフラを「マネジメントする」TDMに注目です。
Writer: 山田和昭(日本鉄道マーケティング代表、元若桜鉄道社長)
1987年早大理工卒。若桜鉄道の公募社長として経営再建に取り組んだほか、近江鉄道の上下分離の推進、由利高原鉄道、定期航路 津エアポートラインに携わる。現在、日本鉄道マーケティング代表として鉄道の再生支援・講演・執筆、物流改革等を行う。





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