旅客機、実はバック可能? できるのにしない理由とは

旅客機がバックする際、トーイングカーという作業車がこれを押しますが、実は自力でもバックすることができます。なぜわざわざ作業車に推してもらっているのでしょうか。

離陸の際、後ろに「押される」のはなぜか

 空港から旅客機が出発する際、たいていの場合はまず後ろ向きに動き始めます。駐機スポットから誘導路までバックして滑走路を進み、そして離陸します。

 この際、通常は「トーイングカー」という、飛行機を牽引したり押し出したりする作業車で、当該機は所定の位置まで押し出してもらいます。この押し出す作業のことを「プッシュバック(Pushback)」といいます。そして誘導路からはエンジンの出力で地上滑走を行います。

Large 170807 back 01
那覇空港でプッシュバックされる全日空のボーイング737-800。トーバートラクターのトーイングカーが牽引する(2016年12月、石津祐介撮影)。

 そこで疑問なのが、「飛行機は自力でバックできないのか?」という事です。

 実は、飛行機は一部を除き、自力でバックすることができます。ジェットエンジンの逆噴射を利用したり、プロペラを逆回転させたりして推進力を逆向きにしバックする「パワーバック」により、機体を後退させる事が理論上は可能なのです。

Large 170807 back 02
羽田空港で着陸後スラストリバーサーを作動させるボーイング787(奥)。手前ではトーバーレストラクターのトーイングカーが同型機を牽引中(2017年3月、石津祐介撮影)。

 逆噴射によるパワーバックを行うには、「スラストリバーサー」と呼ばれる逆推力装置を使用します。この装置、通常は着陸した際に機体を減速させるために使用します。飛行機が着陸する際、タイヤが接地した衝撃の後に大きなエンジン音が聞こえてきますが、これは逆噴射で機体を減速させる制動力を得るために、一時的にエンジン出力を上げるからです。

この記事の画像をもっと見る(8枚)

最新記事

コメント

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。

16件のコメント

  1. 飛行中に逆噴射作動させると失速のおそれありって、実際墜落事故あったでしょう。羽田沖で。着陸中に機長が逆噴射装置作動させて。ちなみに、余談ですが空母の着艦の場合は機体の制動用フックを空母の制動用ワイヤーにひっかけてむりやり停止させます。

    • あの羽田沖の逆噴射機はDC9?8?か忘れたけどジャンボと同じ4発エンジンでしたかね?機長!何するんですか!?先程はお見事、こんな機長と福操縦士のやり取り、機長の精神分析など、当時の機長の奥さんへの取材攻撃に、おまいらこそ精神病んどるんと違うんか?と思ったものでした、しかし安全の為の装備は凶器と紙一重だと熟思い知らされますよ、

    • 昔は飛行中でも逆噴射を使う飛行機があったんですよ。
      羽田沖に墜落した飛行機もそのタイプで、確か外側のエンジン2つを飛行中に逆噴射させて減速させてました。

    • 有名な事故だと、ラウダ航空の767-330ERですかね。
      あのニキ・ラウダが、パイロットの行動は正しかったと、すごい名誉を守っていたのが印象に残る事故でした。

      ボーイング社が、当初シミュレーターで墜落回避は可能だったと発表した後、ニキ・ラウダ本人がそのシミュレーターで一度も回復できず、シミュレーターで回復出来たパイロットの飛行機で同じことをやって見せろ、もちろんニキ・ラウダも同乗する、みたいなことがあって、ボーイング社が訂正したような経緯だったかと。

      さすが大事故からの生還者。

  2. 話の流れでは逆噴射は視界や出力調整が難しいし燃費かさむのでトーイングバックが経済的といいつつ、プッシュバックを行わずに自走で駐機を行う空港の茨城空港は(自走=逆噴射使うので)低コストって変に読めてしまいます。
    実際には、茨城空港の場合はプッシュバックが不要な構造で運用する設計で、乗客を駐機場で乗降させることで、ボーディングブリッジとトーイングカーの組み合わせよりコスト負担を低くした。自走で駐機ってのは、駐機場で旋回することで逆噴射なしの自走で滑走路に戻れる方式ですね。関空なかんでも試行しているようですが。

  3. 「「プロペラを逆回転」させたりして推進力を逆向きにしバックする 」この記述は間違ってます。
    プロペラを逆回転させるのではなく、プロペラブレードの角度を変えることで推力を減らすあるいは逆方向に向ける構造になっています。つまりエンジン、プロペラの回転方向は常に不変で車のようなリバースギアなんて変速装置は付いていません。そもそも回転しているものを瞬時に逆回転させることは物理的に不可能です。
    『プロペラのピッチ(翼角)をリバース(マイナスピッチ)にして推進力を逆向きにし』と改めるべきです。

    • その通り!
      私も記事を読んで「プロペラの逆回転」っていうのを見て、
      よく航空写真家って名乗るなぁと思いましたわ。

  4. アメリカだとDC-9とかが普通にやってるけどね。

    • DC9がやると言うかできる理由はエンジンが上の方に付いていて巻き上げた異物を吸い込む恐れが低いからです。

  5. パワーバックしない理由は経済的とかまわりの影響もあるかもやけど、低速で逆噴射する事で乱れた気流をエンジンが吸入することによるリ・インジェッションストールも危険だからです。最悪の場合エンジンがお釈迦になるから。

  6. もし停止状態で逆噴射をしてしまうと、前方に細かい砂や石などの異物FOD (Foreign Object Debris)が巻き上げられてしまいます。

    これらのFODをジェットエンジン自体が吸い込んだ場合、内部のブレードを破損するリスクが高まります。これもパワーバックを行わない理由の一つです。

    ちなみに、着陸した後も停止するまで本当は逆噴射を使いたいところですが、燃料セーブや上記理由で使いません。緊急時や雪氷滑走路等では十分に減速するまで使うこともあります。

  7. エアフロリダか…。アンチアイス、オフ!

  8. プロペラ推進機のプロペラの回転方向は一緒です。取り付け角度を変更するのです。英語で「リバース ピッチ」と呼ばれるのはそのためです。

  9. ヘルシンキ空港でプロペラ機がプロペラピッチを反転させて自力後退してスポットアウトしたのにはびっくりしました。

  10. 今から30年ほど前ですか、シカゴとかダラスの飛行場で機種は忘れましたがジェット旅客機が自分でバックするのを見たし自分の乗っていたジェット機も自分でバックしたのを経験しました。追記ですが自分でバックするとジェットの場合自分で巻き上げた異物をエンジンの中の吸い込む危険性があるのでやめたということを聞いたことがあります。

  11. 旅客機が逆噴射でバックしない理由は、ブレーキをかけるとしりもちをつくからです。