陸自戦闘ヘリAH-1S、更新が捗らない理由 老朽化は深刻 お金の問題だけではない事情

深刻な生存性問題、イラク戦争の事例

 この問題は戦闘ヘリコプターだけではありません。A-10「サンダーボルトII」やSu-25「フロッグフット」のような低速の攻撃機においても同様であり、A-10は低空での機関砲掃射ができなくなりつつあります。

 また地対空ミサイルを持っていない相手に対しても、戦闘ヘリコプターはかなり厳しい戦いを強いられています。イラク戦争ではアメリカ軍によって、早期にイラク軍の地対空ミサイル防空網は無力化されました。それにもかかわらずイラク軍や民兵の必死の抵抗に直面し、アメリカ軍の戦闘ヘリコプターは大きな損害を受けてしまいました。

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強力なAH-64D「アパッチ・ロングボウ」。陸自は現在12機を保有するも数が少なすぎ使いどころがさらに困難となっている(関 賢太郎撮影)。

 最も衝撃的であったのが2003(平成15)年3月24日夜の「ナジャフの戦い」です。アメリカ陸軍第11攻撃ヘリコプター連隊は保有するAH-64、32機全機を作戦に投入し、苛烈な夜間攻撃を加えました。これに対しイラク軍は、レーダーに頼らない目視観測と携帯電話の使用で巧みに連携、自動小銃や機関銃といった小口径火器で反撃しました。その結果、驚くべきことにたった一夜の作戦で、32機のAH-64のうち31機が被弾、うち1機が被撃墜、1機は不時着後大破、残る29機が損傷により作戦不可能な状態へと追い込まれ、第11攻撃ヘリコプター連隊の稼働機はたった1機に減少し事実上壊滅したのです(とはいえ、その後わずか1週間で15機のAH-64を戦線復帰させたのはさすがのアメリカ軍と言えるでしょう)。

 アメリカ海兵隊が保有するもう1機種の戦闘ヘリコプター、AH-1W「スーパーコブラ」においても状況は同じでした。海兵隊は陸軍のように戦闘ヘリコプターを「深部攻撃」に使わず、おもに地上部隊を空から助ける「近接航空支援」を実施したことから多少は被害が少なかったものの、それでも約25日間に及ぶ戦闘において54機中46機が被弾し修理が必要となる壊滅的な被害を被っています。

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コメント

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2件のコメント

  1. 「攻撃」ヘリコプターと呼称するのが一般的でしょうね。

  2. 素人が考える限り、安価に製造できるドローンを投入するしかないんじゃないかな?
    索敵と攻撃を分業して、索敵は無人のドローンで実施して、後方のミサイル部隊が攻撃を加えるのが効率的だと思う