いまに残る旧陸軍の遺産、朝霞の一○○式鉄道牽引車は線路も道路も走るハイブリッド!(写真13枚)

鉄道の線路上も普通の道路も両方走れる「軌陸車」。陸自朝霞駐屯地の、国内で唯一現存する旧陸軍の軌陸車「一〇〇式鉄道牽引車」はなぜ作られ、そしてなぜいまそこにあるのでしょうか。

一〇〇式を甦らせよ

 2007(平成19)年、同じように展示車輌として武器学校が所有していた旧陸軍の八九式中戦車がレストアされたことなどもあり、輸送学校の一〇〇式鉄道牽引車は全面修復へ向けて動き始めました。

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エンジンも新品同様にレストアされているが、諸事情により動かすことはできない(2012年2月、柘植優介撮影)。
エンジンを反対側から(2012年2月、柘植優介撮影)。
エンジンの銘板(2012年2月、柘植優介撮影)。

 作業は霞ヶ浦駐屯地(茨城県土浦市)の関東補給処で行われることとなり、同年12月に東部方面輸送隊のトレーラーで一〇〇式を輸送。その後東日本大震災の影響や、それにともなう計画停電などの影響を受け輸送学校への返還時期が延びましたが、約1年10ヶ月の修復期間を経て2011年10月28日から往時の姿で輸送学校にて再展示と相成ったのです。

 復元にあたっては、エンジンはシリンダーやコンロッドまで一旦ばらしてきれいに磨き上げて可能な限り動くようにレストアされており、キャビンも木製のため腐食していたことから構造材から作り直し、ドア、シート、メーターパネルに至るまで新造されています。

 また劣化のひどかったハンドルはアルミの芯に木材のグリップを付け、樹脂で全体をコーティングするという当時と同じ手法で復元された複製品が新たに作られたほか、ネジやリベットについても現在のものと規格が違うことから全て内製し、そのために工具までも専用のものを新規に作成したそうです。

 そして車体の塗装に関しても、長年に渡る展示で何重にも上塗りされたオリーブドラブ色の塗膜をすべて剥がし、一番下から新造時のカーキ色を探し出して、それを基に6種類の塗料を調合して再現したとのことでした。

 残念ながら武器学校の八九式中戦車と違って自走こそできませんが、エンジンは光り輝き、ボンネットの開閉や冷却用のボンネットシャッター、車体の前部に装備したジャッキ(後部ジャッキは欠損)まで可動するなど、新車同様の完成度に仕上がっています。

 原則として一般公開はされていませんが、陸上自衛隊広報センター(りっくんらんど)が実施する駐屯地見学ツアーのコースに入ることがありますので、ホームページなどで確認してみてください。

■一〇〇式鉄道牽引車 諸元

・全長:6.10m

・全幅:2.44m

・全高:2.45m

・重量:6.3t

・速度:60km/h(単車時)、25km/h(牽引時)

・牽引力:2500kg

・機関:空冷ディーゼル、90馬力

・燃費:2.3km/L(牽引時)

・軌間隔:3段階の変更可能

 (1)1067mm(日本)

 (2)1435mm(中国)

 (3)1524mm(ロシア)

・転路(鉄路走行と道路走行の切り替え):転路用ジャッキ使用により約5分

【了】

※一部修正しました(6月13日19時00分)。

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Writer:

創刊40年以上を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)の編集人。子供のころから乗り物全般が好きで、車やバイクはもちろんのこと、鉄道や船、飛行機、はたまたロケットにいたるまですべてを愛す。一時は自転車やランニングシューズにもはまっていた。

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コメント

5件のコメント

  1. 良い記事でした。

    埼玉の鉄博に取られるところだったというウワサを聞いたことがw

    動かせないのは、これもまたウワサですが自走できると装備品になってしまい、管理上の問題があると…

    北海道で61式戦車を復活、イベントで走行展示したら財務省に大目玉喰らったという…

    なにはともあれ、朝霞で末永く保存してもらいたいものです。

  2. 大昔に鉄道部隊であった陸上自衛隊の第101建設隊の車輌じゃないんだ。

  3. 徳島では 普通の道も 鉄道のレールも走れる バス型の列車が普通に走ってます。

    都会だけでなく ぜひ」田舎にもお越しくださいな。

  4. > ・牽引力:2500t

    単位まちがってる ??

    • ご指摘ありがとうございます。

      訂正いたしました。