戦車の砲はなぜひとつ? 多砲塔戦車が廃れ単砲塔単砲身に落ち着くまでの紆余曲折とは(写真14枚)

かつてはたくさんの砲塔や砲身を備えた戦車もありましたが、その誕生からおよそ100年、世界中どこを見ても砲塔ひとつに砲身がひとつという同じカタチをしています。そこに落ち着いたのには、実にわかりやすい理由がありました。

砲塔ひとつ砲身1本のナゼ

 戦車といえば、角ばった車体に履帯(いわゆるキャタピラー)を付けて、砲塔を1個載せているという形でどの国の戦車でも同じです。一方、マンガやアニメでは砲塔を多数載せた、もしくは砲身を複数装備する戦車も存在します。それが現実ではなぜ各国とも単一砲塔に単一砲身という同じ構造に落ち着いてしまったのでしょうか。

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イギリスのボービントン博物館に展示・保存されている「インディペンデント」重戦車(月刊PANZER編集部撮影)。

 戦車が発明されて約100年経ちますが、実のところそのあいだには、現在では見たことも無いような形の戦車がいろいろと造られています。そのなかのひとつとして、過去「多砲塔戦車」も存在しました。

 多砲塔戦車は文字通り、砲塔を2個以上載せているのが特徴です。砲塔が1個しかなければ、敵が反対から現れた場合、すぐに撃つことができません。しかし2個以上あればあるほど、あらゆる方向をより早く撃つことができます。いうなれば戦艦のように。それならば、砲をたくさん載せた戦艦を小さくしてキャタピラをつけた「陸上戦艦」は最強の戦車になりそうです。

 戦車が発明された第一次世界大戦当時は、地面に掘った塹壕に立てこもって戦うことが多く、攻め手はこの塹壕をどうやって突破するかで苦労しました。解決方法のひとつが戦車で、撃ってくる敵の弾を跳ね返しながら、突撃する味方を援護して敵の塹壕に乗り込んでいくことが戦車の役割でした。

 第一次世界大戦が終わると、各国は戦車が強力な新兵器であることを理解しました。多くの砲や機銃を備えた戦車で敵の塹壕に乗り込んで行ってあらゆる方向に撃てれば、さぞ有利だろうと研究が始まりました。こうして多砲塔戦車は生まれたのです。

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6件のコメント

  1. 昨今の市街戦等の歩兵対策で砲塔上に装備されるRWSなんて多砲塔戦車の再来って言えなくもない?
    その前にアメリカのM60戦車の車長キューポラ内装の.50calもそんな感じだけど。

  2. ロマンがあるだけに来て欲しい多砲搭戦車が見直される日

  3. 多宝塔の精神は日本で生きている。

  4. この手のライターさんは、
    なぜパットンやリーやラム等の銃塔を無視するのか。
    多砲塔戦車の中でも特異なT-35を代表扱いするのか。
    T-35が採用時点の戦車の中では重装甲だったことを無視するのか。
    T-28が当時BTを除けば最高クラスの機動力だったことを無視するのか。
    英の多砲塔戦車はA1E1以外機動戦車の系列だということを無視するのか。

  5. 公式に多砲塔戦車というカテゴリが存在するわけではなく、後世の人間が複数の砲塔を持つ戦車の一部を恣意的にそう呼んでいるだけです。

  6. ついでにインデペンデントが複数の銃塔を持つのは、WW1で戦車の機動力に追従できなかった随伴歩兵の代わりに戦車を守る、いわば歩兵からインデペンデントする為という明確なもの。記事中のようなぼんやりした理由ではありません。