銀座線の電車が丸ノ内線を走る? 車両がよその路線を走る重要なワケ
東京メトロの駅で列車を待っていると、別路線の車両が回送列車で入ってくるときがあります。わざわざ別の路線を走るのには、重要な理由があるためです。
並行する線路に連絡線を設置
東京メトロ丸ノ内線の駅で電車を待っていたら、銀座線の電車が走ってきた――そんな不思議な光景を目にしたことはありませんか。
もちろん、映画や小説に出てくるような幽霊列車でも、テロリストに操られた暴走列車でもありません。その正体は、営業運転では使われない「連絡線」を通って丸ノ内線に乗り入れてきた、回送列車です。
赤坂見附駅は、同じホームで銀座線と丸ノ内線の乗り換えができる便利な構造をしています。線路が並んでいれば「乗り換え」しやすいのは電車も一緒。赤坂見附駅の手前には、銀座線から丸ノ内線へ入る分岐器(ポイント)が設置されています。回送列車はこのポイントを渡って、丸ノ内線に乗り入れてきたというわけです。
しかし、銀座線の電車が丸ノ内線に入ることはできても、丸ノ内線の電車が銀座線に入ることはできません。銀座線と丸ノ内線は線路の幅や電圧、集電方式は同じですが、車体の長さ、幅、高さともに丸ノ内線のほうがひと回り大きく、銀座線のトンネルを走れないからです。ではなぜ、銀座線の電車だけが丸ノ内線内に入っていく必要があるのでしょうか。
その答えは、列車の目的地にあります。銀座線の電車が向かう先は、丸ノ内線の中野富士見町駅近くにある中野車両基地(東京都中野区)。銀座線の電車は、この基地内にある車両工場でメンテナンスを受けるために、わざわざ丸ノ内線を経由してやって来たのです。
鉄道車両は安全運行のために定期的な検査の実施が定められており、日常的な検査は各線の車両基地内に設けられた検査施設(検車区)で行われます。しかし、原則的には4年ごとに行われる「重要部検査」と、8年ごとの「全般検査」は、車両を切り離して部品も取り外し、徹底的にチェック。必要なら修理も行う大掛かりな検査になります。そのため、専用の設備を持つ車両工場で実施します。
では、東京メトロ9路線の車両をどうやって共演したのか知りたいです。銀座線と丸ノ内線は他の路線と電気の取り方が異なっているので。