マンションに消える廃線跡、その正体は 住宅街を貫く線路、踏切跡… 東京・王子の風景
東京都北区王子の住宅街に、柵で囲われた廃線があります。踏切の跡や古びた鉄道施設が残り、巨大なマンションの前で途切れるこの線路、地域の移り変わりを物語る証人ともいうべき存在です。
紙が運ばれた「北王子線」
東京都北区にあるJR京浜東北線の王子駅より、線路の東側に沿って北へ歩いていくと、1本の線路が右前方へ分かれます。
戸建てやマンションが立ち並ぶ住宅街へと続く、この線路。雑草が生い茂り、いくつかある遮断機のない踏切には、線路内へ入れないよう柵がしてあります。つまり、もう列車が走らない「廃線」です。踏切を通過するクルマも、一時停止する様子はありません。
やがて線路は、マンションの駐車場前にある踏切跡で途切れます。また、そのマンション駐車場の先で、再び線路と踏切の跡地と思しき土地が現れますが、レールは剥がされており、付近にはひときわ巨大なマンションが立ちはだかります。
閑静な住宅街のなかで異彩を放つこの廃線、いったい何なのでしょうか。北区立中央図書館「北区の部屋」の地域資料専門員、黒川徳男さんに聞きました。
――あの廃線は何なのでしょうか?
「北王子線」と通称された貨物線の跡です。線路の先に立ちはだかる巨大なマンションの場所はもともと、日本製紙の子会社である日本製紙物流の倉庫でした。その敷地内にあった、貨物駅の北王子駅に列車が発着していたのです。
――何が運ばれていたのでしょうか?
新聞や書籍などに使われる紙です。宮城県の石巻や岩沼にある日本製紙の工場から、山手線田端駅付近にある田端信号場駅を経由し、北王子駅まで紙を積んだ貨物列車が日に4回、2011(平成23)年の東日本大震災以降は3回運行されていました。北王子駅からはトラックで、たとえば北区内にある読売新聞の印刷工場などへ運ばれていました。
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北王子線が廃止されたのは2014年3月のこと。黒川さんは、「踏切の安全確保などで、貨物列車の先頭に連結されたディーゼル機関車のデッキに人が立って運行されていたのが印象的でした」と話します。
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