F-35戦闘機捜索に投入の海底研究船「かいめい」とは 科学研究のための船をどう活用?
なぜ「かいめい」が投入されるの?
「かいめい」はおもに日本周囲の海を航海し、MCSを使い海底を広範囲に探り、海底埋蔵資源の存在が有望視された箇所を発見すれば、ROVやそのほかの採取装置を潜航させてサンプルを採取し、引き揚げたサンプルはすぐさま船内の研究室で観察・分析することができる研究船です。エネルギー資源の少ない日本にとって、日本の周囲の海に眠る手つかずの海底埋蔵資源は、次世代を担う資源としてその開発を望まれており、日本の海のどこに、どれほどの資源があるか、これを解き明かすことが「かいめい」のミッションとなっています。
ちなみに海洋研究開発機構は、「かいめい」を含め、8隻の研究船を保有・運航する組織です。1971(昭和46)年に設立され、再来年の2021年には設立50周年を迎えるこの組織は、海洋と地球を対象とする多種多様な研究を行っており、深海や海底下を調査するための装備や資機材の開発も行っています。代表的なものは、水深6500mまで潜航可能な有人潜水調査船「しんかい6500」や、海底下を大深度まで掘り進める科学掘削船である地球深部探査船「ちきゅう」などがあります。
こうした海底広域探査能力と海中作業能力を持つ「かいめい」が、F-35A戦闘機墜落事故の捜索活動に投入されることになった意味を考えてみます。
F-35A戦闘機が墜落したと思われる青森県東方の海域では現在もなお、海上自衛隊の護衛艦や潜水艦救難艦、海上保安庁の巡視船などが捜索を続けていますが、海は広く、機体の海没地点の特定どころか、墜落した海域の絞り込みにすら難渋している状況なのだと思われます。
そこで海底を見通す目を持った「かいめい」を投入。先述したMCSを使い、まずは広範囲に調べ、有望な手がかりを海底に見つけたならばピンポイントでROVを投入。ROVの高精細カメラで機影を捉え、海没地点を特定する……こうした捜索方法が考えられたのでしょう。これは「かいめい」の海底探査手法そのものでもあります。
あるいは、墜落した海域は大まかに判明したので、その範囲の中から、機体の海没地点を絞り込み、特定したいという段階にあるのかもしれません。そこで、海底地形を精細に描き出すことのできる「かいめい」の能力が必要になったのでしょう。
F-35Aの捜索で日本の海底調査が進展する訳か