米軍なぜ改めてF-5「タイガーII」戦闘機を中古購入? 世界的にいまだ需要があるワケ

実は映画『トップガン』にも登場

 最終的にF-5E/Fは1399機が生産され、20か国以上に採用されましたが、開発国のアメリカにおけるF-5E/Fは「外国への供与用」という位置づけの戦闘機であり、アメリカは自国の軍で採用する意思を持っていませんでした(アメリカにおける実績作りのため、F-5A飛行隊がベトナム戦争に投入されたことはあり、「スコシ・タイガー作戦」の名で知られる)。しかし1975(昭和50)年にベトナム戦争が終結して、同盟国であったベトナム共和国(南ベトナム)が消滅したことで、同国への供与を見込んで製造していたF-5E/Fが大量に余ってしまったことから、アメリカ軍はこれを引き取り、空対空戦闘訓練の仮想敵機として運用することにしました。

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アメリカ海軍と海兵隊のF-5N。尾翼に赤い星が見えるように、仮想敵国の戦闘機を意識した塗装が施されている(画像:ノースロップ・グラマン)。

 本意ではない形でF-5E/Fを導入することになったアメリカ軍ですが、高い運動性能を備えた同機は、訓練で旧ソ連製戦闘機、とりわけMiG-21の役を演じるにはこれ以上ない戦闘機でした。アメリカ海軍が仮想敵機として運用していたF-5E/Fは、1986(昭和61)年に公開された映画『トップガン』で、旧ソ連が開発したという設定の架空戦闘機MiG-28役も務めています。

 アメリカ空軍は1989(平成元)年をもってF-5E/Fの運用を終了していますが、同機を高く評価している海軍と海兵隊は現在もF-5Nとして運用を続けており、スイス空軍から退役した機体の追加購入もしています。

 一方で近年、空対空戦闘訓練の仮想敵は、民間企業の運用する訓練機が務めることが増えていますが、こうした民間企業においてもF-5E/Fはいまだ需要があります。たとえばアメリカの民間企業であるタクティカル・エア・サポート社も、F-5E/Fのレーダーや電子戦装置などを近代化して、より現在の実戦に近い訓練環境を提供する「F-5AT」を運用しており、今後、各国の空軍から退役するF-5を導入する企業が増えると見られています。

 今回アメリカ国防総省が取得費を計上したF-5E/Fは、スイス空軍からの退役が予定されている機体ですが、民間企業に先を越される前に、予算措置に踏み切ったのではないかと考えられます。

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