戦艦「陸奥」はなぜ爆沈した? 旧海軍のアイドル艦 隠された事故とその背景、残る謎

「世界のビッグ7」の1隻に数えられた戦艦「陸奥」は、同「長門」と共に、旧海軍の象徴でした。ところがその最期は、瀬戸内海に停泊中、爆発事故を起こし沈没するというもの。1943年6月8日、その日「陸奥」になにが起きたのでしょうか。

「陸奥」は放火で沈んだのか?

 海軍はこの爆発事故の原因究明のため、査問委員会を設置します。爆発原因は当初、三式弾(対空用砲弾)の自然発火が疑われましたが、目撃証言や検証実験から、発火したのは装薬(砲弾を発射するための火薬)と推定されます。しかし発火の直接原因は、2019年現在に至るも特定されていません。委員会は、技術的に見れば放火など人為的なものであると結論せざるを得ないとしています。

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1936年9月30日に完了した大改装後の「陸奥」。艦橋が大きく改造され、煙突が1本となった。

 海軍はそれまでにも、日露戦争の「日本海海戦」での旗艦だった戦艦「三笠」、巡洋戦艦「筑波」、戦艦「河内」、防護巡洋艦「松島」などを火薬庫の爆発事故によって喪失しています。

 原因の多くは「自然発火」とされていますが、人為的な放火というのも見逃せません。1912(大正元)年11月18日、装甲巡洋艦「日進」が静岡県の清水港で火薬庫爆発事故を起こしました。原因は乗組員の放火でした。動機は、艦内の処遇に不満を抱いた乗組員が艦長に脅迫状を送ったものの事実上、無視されたため、脅迫を実行したのです。

 問題なのは、海軍や艦長が脅迫状に対しても調査、警戒した形跡がなく、実際に爆発事故が発生したにも関わらず調査委員会は原因を「自然発火」で収めようとしたことです。別件で逮捕されたこの乗組員の自供が無ければ、放火は無かったことにされるところでした。海軍にとっては乗組員による内部犯行で艦船が損失するなど大変な不祥事で、意図的に隠ぺいしようとしたことが疑われます。

「陸奥」の場合も、直前まで艦内で窃盗事件が多発しており、容疑者への査問が行なわれることになっていたことから、これを逃れるために放火したとの説もあります。

 海洋で行動する閉鎖空間である艦船は、飛行機や戦車と異なり、乗組員にとっては単なる兵器以上に「社会生活の場」です。艦にはそれぞれ個性のように「はつらつとした」とか「どことなくよどんだ」とかいった、独特の艦内の「空気感」というものがあるそうです。窃盗事件が多発したという「陸奥」艦内の空気感は、華やかなアイドル艦の表の顔とは裏腹なものだったのかもしれません。

【了】

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コメント

1件のコメント

  1. 大本営参謀であった爺様の従弟の調査では、ピクリン酸を使用した下瀬火薬(国内では硝石が枯渇し、TNT火薬の製造が滞ったため明治時代に開発されていた下瀬火薬が再度生産されていた)下瀬火薬は取り扱いが難しく、三笠、畝傍など何度か火薬の取り扱いミスによる爆発事故が起こっており、陸奥もこの事故によるものと推定される。またこの手の事故の場合、自軍の不備を敵国に知らせないため原因不詳として発表するのが常である。

    自分は海中から引き揚げられた陸奥の船体を実際に確認しているが、外部から機雷による力がかかった後で内部から爆発したような相反二方向に力がかかったのではなく、内部から外部に向かって一方的に力がかかっているように見受けられた。よって、触雷や魚雷攻撃によるものとは考えにくい。

    兵の放火によるものかどうかは俄かには判断し難いが、少なくとも外部からの攻撃ではないと思われる。

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