「全線開通」した三陸鉄道、半年後のいま ラグビーW杯でにぎわうも道路延伸が脅威に
車窓には防潮堤と三陸道
ホームに停車している列車に入ると、発車10分前の時点で座席が満席に近いほどのにぎわいでした。列車は2両編成の盛行きです。運行は、三陸鉄道の本社がある宮古駅を起点に南北に分かれています。
列車が南に走り出すと、リアス式海岸の山あいを進みます。しかし、旧南北リアス線区間と比べてしまうとカーブが多く、トンネルは少ない印象です。市街地に入ると、直線的に高架を走る旧リアス線とは対照的に、列車は平地に下りていきます。路線は、旧山田線をほとんど踏襲しているのです。
再び大津波が押し寄せた際、また同じような被害に遭うのではないか……そう思いリアス式の湾口に目をやると、高さ15mはありそうな防潮堤がそびえ立っています。「今度」はこの防潮堤が防いでくれるので、被害が抑えられるという判断なのかもしれません。
車内は地元の通学客に加え、新たに開通した宮古~釜石間の乗車券を記念撮影する人など、観光客が多く乗っていました。しかし、そのほか地元の大人はほとんどいないような感じでした。山側を見上げると、それは無理もないと納得がいきます。ほぼ全線にわたって無料の三陸道が並走しており、40km/h前後で進む列車を横目に、高台の上ではクルマが追い抜いていくのです。
三陸道は「復興道路」とも呼ばれ、震災復興の象徴と言えます。宮古から南は気仙沼市内を除く全線が開通しており、クルマで1時間弱を要していた宮古~釜石間は、約30分に短縮されました。三陸鉄道は同じ区間を1時間25分かけて走ります。旅情に浸るのであれば三陸鉄道に軍配があがるでしょうが、日常の移動の手段としては復旧前より一層厳しい立場に立たされています。
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