鉄道の東武 西武 南武…「北」は? 実は2年弱あった「北武線」いま走っているのは…

秩父鉄道に組み込まれ 2年未満の運行期間

 その理由は運賃でした。官営鉄道は全国一律の運賃体系を取っており、長距離になるほど運賃が安くなる仕組みでした。この制度では、近距離輸送の割引率は低くなります。一方、東武鉄道は顧客に対して大幅な値引きを実施していました。北武鉄道には東武鉄道の根津嘉一郎も関わっていましたから、秩父鉄道は東武鉄道に対して忖度を期待したかもしれません。

 北武鉄道は新たに鉄道免許を取得。1921(大正10)年に羽生~行田間を開業します。翌年には行田~熊谷間を開業して全線開業となりました。しかし、それからわずか1か月あまりで秩父鉄道と合併し、北武鉄道線は秩父鉄道秩父線の一部となりました。つまり、北武鉄道の運行期間は2年に満たなかったことになります。

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秩父鉄道の7500系電車(杉山淳一撮影)。

 余談ですが、浦和駅は周辺に「東浦和駅」「西浦和駅」「南浦和駅」「北浦和駅」があって、東西南北がそろう駅として有名です。秩父鉄道が羽生~熊谷間を北武線として残してくれたら、鉄道会社や路線名も「東武」「西武」「南武」「北武」がそろってスッキリしたなあと筆者(杉山淳一:鉄道ライター)は思います。

 さらに余談ですが、東西南北から欠けた「北武」は、仮想鉄道のネタとして会社名に使われています。ネットで検索すると、ウェブサイトがいくつかヒットします。架空の路線図や列車種別表、車両のイラストなどがあり、筆者が更新を楽しみにしている仮鉄サイトです。

【了】

【地図】「北武鉄道」が走っていたルート

Writer: 杉山淳一(鉄道ライター)

乗り鉄。書き鉄。ゲーム鉄。某出版社でゲーム雑誌の広告営業職を経て独立。PCカタログ制作、PC関連雑誌デスクを経験したのち、ネットメディアなどで鉄道関係のニュース、コラムを執筆。国内の鉄道路線踏破率は93パーセント。著書に『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。日本全国列車旅、達人のとっておき33選』(幻冬舎刊)など。

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コメント

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3件のコメント

  1. 架空鉄道の方、かなり作り込まれていますね。

  2. 東武 西武 南武 北武のほかに中武馬車鉄道ってのもありましたね。

  3. 私鉄時代の南武線は南部鉄道だったけど、勘違いから間違って南武鉄道になってしまったと聞いた記憶があります。